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冷凍するとか言って、全然唐揚げ残ってないし。
二人で後片付けをしながら他愛もない話をするのももう日常で。
「何か危ないことあったら言ってくださいね。頼りないかもしれないけど、事情知ってる数少ない一人ですから」
「ありがとう。まぁ…うん、丸く収めたいと思ってるけど。状況が状況やからまた迷惑かけるかも」
しゅんと眉をさげると、先輩は流していた水を止めた。
途端に静寂が訪れてなんだか無性に寂しくなる。
「…マグカップ、持って帰ってもいいですか？」
「え？」
「先輩の家にあっても意味ないでしょ」
拭いたばかりのそれを手に取って見せると、こくんと頷く。
「ええよ。プチプチないか探してくる」
アホみたいなことしてるって思う。
別に、ここに置いておいたって先輩がどうにかしてくれるやろし、持って帰るなんて未練がましいな、とも。
やけど、もし万が一これを先輩が誰かと使ったらなんて考えてしまうとだめだった。
優しいのにどこか抜けてて、デリカシーのない人だから。
俺がこの場で割りでもしなければ当たり前のように棚の中に入れっぱなしで、下手したら新しい彼女に使ったりするかもしれへん。
「新聞紙でもいけるかなぁ」
「はい、ありがとうございます」
手が滑ったふりして割ろうと思っていたそれを、結局割れなかったのは俺が弱いから。どうしようもなく弱いから。
・
「一ヶ月間ありがとうございました」
「いやいやお礼言うのは俺の方」
最後まで先輩の“送っていく”を断る術は身に付かなかった。
マグカップを大事に抱えて歩く最後の帰り道。
「…楽しかったです。ご飯誰かと一緒に作ったり、夜遅くまでゲームしたり、この年になるとなかなかできひんかったから」
「んふふ、そっか。珍しいな、神山が素直なの」
「っ〜！別に最後くらいええやん」
「照れてるん？」
にや、と笑う顔は思ったよりずっと至近距離で。
きっと俺の赤くなった頬だって見えてる。
「神山もう…ほんま…」
「へ？」
「なんでもない。あー何回もありがとありがと言うてたから締め方なんもわからへんわ」
そう言って困ったように頭をかいた先輩は、ふぅと小さく息を吐いた。
「お世話になりました。迷惑かけてごめん。それとありがとう。俺も楽しかった」
「はい、ありがとうございました」
きっとこの駅を使うことももうない。
ICカードをタッチすると定期区間外であることを告げるチャイムが鳴った。
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ナナセ(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます。完結まで漕ぎつけられたのはあさんを始め、たくさんの方が読んでくださったおかげです！最後までお付き合いいただきありがとうございました☺️ (8月22日 9時) (
レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - ゆきのさん» コメントありがとうございます。赤さんは途中から💚さんへの気持ちに自覚が出てきたので、だんだん会いたいだけで誘うようになったし、キスもそういうことです🙊 最後までお付き合いいただきありがとうございました！ ぜひ次回作もお付き合いくださいませ！ (8月22日 9時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - foolさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまって申し訳ありません💦 緑さん可愛いファンクラブ(自称)なので嬉しいですー！ (8月22日 9時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
あ - 初コメ失礼いたします。完結おめでとうございます！緑くんの恋が実って良かったです😭今回も素敵な作品ありがとうございました！ (8月21日 20時) (レス) id: f17f5e7704 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - もともと緑くんが好きだったから、見えない所でも恋人っぽく振る舞ってたのかと思いきや、天然だったのはちょっとビックリ。罪な男…！付き合い始めて、青くん達にも紹介したんだろうなとか、色々妄想したくなっちゃいます。次回作も楽しみにしています。 (8月20日 1時) (レス) id: 22105fbc41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2023年7月14日 22時
