#16 ページ16
「すみません、変なところ見せちゃって」
「ううん。全然。むしろ神山の家入り浸りすぎやったよな。よく泊まるっていう友達も全然家呼べてへんやろ？」
「あー、まぁあいつはどうにでもなるから…」
淳太にぃも淳太にぃやけど、流星と鉢合わせしたらそれこそちょっとした修羅場か。
何もかも包み隠さず話している彼に、重岡先輩を会わせるのは気が進まない。
「お兄さんには言いたない？」
「っあー、まぁ、はい」
「そっか」
言えるわけないやん。
俺ずっと、何年も、男の人が好きやって必死になって隠してきたのに。
心の中で言った文句は完全にお門違い。
知られちゃいけない、誰にも言っちゃいけない、そう思って生きてきた分、屈折している自覚はある。
あっくんたちに出会ってからは少しずつ変わったけど…。
やっぱり淳太にぃに会うと昔の記憶が思い出されるから。
「別に隠すことでもないと思うねんけどな？家族なら余計に」
「…それは、その、先輩のお手伝いをしていることを、ですか？」
「いや、俺と付き合ってるって」
真っ直ぐ射抜く視線。
周りの人に愛されて、肯定されて、育ってきた人間がするその視線。
大好きなはずの先輩を遠くに感じて、理解できない生き物みたいに思えてしまう。
「……、」
「まぁそれやとお兄さんにわざわざ嘘ついてることになるか。ごめん、忘れて。ちょっと俺も焦ってたみたい」
はぁ、と先輩はため息をつく。
「最近、あの子から連絡増えたの。外堀埋めなきゃって必死になってた。神山のお兄さんに言っても、それがあの子に伝わるわけでもないししょうもないよな。ごめんほんま」
「あ、いえ…」
「でも、なんとなく。なんとなくやけどさ、お兄さんにちゃんと本心伝えられてるのかな？って心配になった。二人とも気ぃ使ってる感じして」
あーまたズケズケ余計なこと言ってる、ごめん、でも、なんか。
先輩はぐしゃぐしゃと頭を掻いて俯く。
「まぁまぁ特殊なんで、うちは。両親が早くに亡くなって、お兄ちゃん兼親みたいな感じなんです。やから、反抗期？みたいなのもあったし」
「…そっか」
「先輩、勘鋭いですね」
いつか俺の気持ちも全部見透かされてしまうんやないかって怖くなる。
「じゃあ、気をつけて帰ってください」
ぽん、と彼の背中を押した手のひらにじんわりと熱が集まった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 523人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナナセ(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます。完結まで漕ぎつけられたのはあさんを始め、たくさんの方が読んでくださったおかげです！最後までお付き合いいただきありがとうございました☺️ (8月22日 9時) (
レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - ゆきのさん» コメントありがとうございます。赤さんは途中から💚さんへの気持ちに自覚が出てきたので、だんだん会いたいだけで誘うようになったし、キスもそういうことです🙊 最後までお付き合いいただきありがとうございました！ ぜひ次回作もお付き合いくださいませ！ (8月22日 9時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - foolさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまって申し訳ありません💦 緑さん可愛いファンクラブ(自称)なので嬉しいですー！ (8月22日 9時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
あ - 初コメ失礼いたします。完結おめでとうございます！緑くんの恋が実って良かったです😭今回も素敵な作品ありがとうございました！ (8月21日 20時) (レス) id: f17f5e7704 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - もともと緑くんが好きだったから、見えない所でも恋人っぽく振る舞ってたのかと思いきや、天然だったのはちょっとビックリ。罪な男…！付き合い始めて、青くん達にも紹介したんだろうなとか、色々妄想したくなっちゃいます。次回作も楽しみにしています。 (8月20日 1時) (レス) id: 22105fbc41 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ナナセ
| 作成日時：2023年7月14日 22時
