#15 ページ15
鍵を差し込んで時計回りに捻る。
予想した手応えがなくて、俺は思わず声を上げた。
「鍵、かけてましたよね」
「うん。かけてたよ。見た」
「……え、怖」
泥棒に入られたところで、金目のものなんて限られてる。
やけどじゃあどうぞウェルカムですと言えるほど神経の図太い人間でもない。
「俺先入るから、神山後ろいて」
「え、でも…」
「怖いんやろ？俺も怖いけど、先輩としてちょっとはカッコつけさせてや」
その言葉に甘えて、先輩の背後から中を伺う。
部屋に煌々と電気がついていて、誰かが中に入ったことは明らかだった。
「…とも？帰ってきたん？」
「え、神山の知り合い？」
「夜中に出歩いたら危ないやろ〜……どちら様？」
サラサラの金髪を揺らして現れたのは、淳太にぃだった。
「何も連絡せんと来ないでよ。泥棒かと思ってびっくりした」
「ごめんて。こっちに用あったからついでに」
淳太にぃは悪びれもせず謝る。
でも元気そうな笑顔を見るとほっとして、つい俺も口元を緩めた。
「それで？そちらさんは？」
「あ、えと智洋さんと、」
「上司の重岡先輩。今日は仕事で色々あって、うち泊まってもらうことにした」
余計なこと言わないで。
その気持ちを込めて部屋着の裾を引っ張ると、意図を汲んだように先輩はぺこりとお辞儀する。
「お邪魔してます」
「弟がお世話になってます。迷惑かけてませんか？とも、意外と天然というかおっちょこちょいなところがあって…」
「も、そういう話ええから。うち二人も泊まれへんよ。淳太にぃまだ足ある？」
油断すると俺が小学生の頃に朝顔に水やりすぎて枯らしたこととか (淳太にぃの十八番話) 言い出しそうだったから遮る。
「え、お兄ちゃんのこと追い出すん？」
「そりゃ…こっち上司やで？」
「久しぶりの再会を果たした兄は」
「そら申し訳ないって思うけど。タクシー代くらい出す」
「っ、弟にお金もらうような覚えはないわ」
ムッとした顔。
淳太にぃプライド高いから、多分めちゃくちゃ地雷踏んだ。
けど、俺先輩の前でまたいつもの話されるの嫌で、やから今だけは早よ帰ってほしくて。
「あの、俺帰ります」
「先輩…」
「仕事も一段落して、今ちょうどコンビニに行ったくらい集中力切れてる頃なんで。兄弟で積もる話もあるでしょうから」
な？って優しく微笑まれると言い返せない。
先輩はずるい。これじゃあ帰ってほしくないなんて、今日も泊まっていってほしいなんて、言えない。
「…わかりました。通りのところまで送ります」
「え、別にええよもう暗いし」
「俺がしたいんで」
いつかのお返しの言葉。
先輩は嬉しそうに笑った。
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ナナセ(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます。完結まで漕ぎつけられたのはあさんを始め、たくさんの方が読んでくださったおかげです！最後までお付き合いいただきありがとうございました☺️ (8月22日 9時) (
レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - ゆきのさん» コメントありがとうございます。赤さんは途中から💚さんへの気持ちに自覚が出てきたので、だんだん会いたいだけで誘うようになったし、キスもそういうことです🙊 最後までお付き合いいただきありがとうございました！ ぜひ次回作もお付き合いくださいませ！ (8月22日 9時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - foolさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまって申し訳ありません💦 緑さん可愛いファンクラブ(自称)なので嬉しいですー！ (8月22日 9時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
あ - 初コメ失礼いたします。完結おめでとうございます！緑くんの恋が実って良かったです😭今回も素敵な作品ありがとうございました！ (8月21日 20時) (レス) id: f17f5e7704 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - もともと緑くんが好きだったから、見えない所でも恋人っぽく振る舞ってたのかと思いきや、天然だったのはちょっとビックリ。罪な男…！付き合い始めて、青くん達にも紹介したんだろうなとか、色々妄想したくなっちゃいます。次回作も楽しみにしています。 (8月20日 1時) (レス) id: 22105fbc41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2023年7月14日 22時
