#14 ページ14
触れていた体温がぱっと離れて、それがどうしようもなく寂しくて。
「いらっしゃいませー」
コンビニの店員さんが気だるそうに挨拶をする。
きっと、人目が気になるんやなくて、俺が気にすると思ったから。
先輩の持つ図太さは、今までまっすぐ“正しい道”を歩んできた人特有の自信、やと思う。
「どれやったっけ？」
「あ、えっと」
衝動買いするには少し高いアイス。
改めて値段を見ると烏滸がましかったかなとか。
「美味しそうやん。俺にも一口ちょうだい」
そう言ってカゴに入れると、缶ビール(多分これがほんまの目的)とチータラを持ってレジに向かう。
「神山もなんか飲む？」
「や、大丈夫です」
「あれ弱いんやっけ」
そういや飲み会でも飲んでなかったな〜と先輩が頷く。
全く飲めない訳やないけど、弱い自覚はあるし面倒起こしたくないし。
大抵飲むとすぐ眠たくなってしまうタイプやから自分からお酒を飲むようなことはしない。
「先輩はお酒好きなんですか？」
がさがさとレジ袋が音を立てる。
俺と先輩を隔てるように内側の手に握られたそれがもどかしい。
「うん、まぁ普通に。家やと毎日飲んでる」
「アル中やないですか」
「待ってそれは基準がおかしいって！神山基準ならこの世の人間ほぼアル中やで？」
慌てて弁明する重岡先輩。そんな必死にならんでも。笑
「はいはい、わかりました」
「なぁわかってないてそれぇ」
「も、ええから別に！健康に気ぃつけてください」
やっぱり先輩には笑顔で長生きしてほしい。
その隣にいるのが俺やなくて、家庭的で愛らしい女の人だなんてわかりきってるし、それでいいと思ってる。
「…そういえば、先輩と俺、最近仲良いって噂になってるみたいですよ」
「お、そうなん？効果的面やん」
「いや職場で話題になっても…」
「敵を騙すにはまず味方からってよう言うやん」
フィアンセ(仮)を敵というのも、ただの同僚たちを味方と言うのもやめていただけませんか。
心の中で突っ込むも、その言葉は口からは出ない。
「俺と神山は共犯者やなぁ」
「勝手に共犯にしないでください、俺どっちかっていうと被害者」
「…そやなぁ」
「っ、なんでそこで本気で申し訳なさそうな顔するんですか」
月明かりに照らされた先輩は、困ったように眉を下げながら笑う。
「神山の時間、勝手に奪ってもうてるなって」
「…好きでやってるからいいんです。今更だし、もうあと一週間と少ししかないやん」
寂しい、なんて口が裂けても言えないな。
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ナナセ(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます。完結まで漕ぎつけられたのはあさんを始め、たくさんの方が読んでくださったおかげです！最後までお付き合いいただきありがとうございました☺️ (8月22日 9時) (
レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - ゆきのさん» コメントありがとうございます。赤さんは途中から💚さんへの気持ちに自覚が出てきたので、だんだん会いたいだけで誘うようになったし、キスもそういうことです🙊 最後までお付き合いいただきありがとうございました！ ぜひ次回作もお付き合いくださいませ！ (8月22日 9時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - foolさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまって申し訳ありません💦 緑さん可愛いファンクラブ(自称)なので嬉しいですー！ (8月22日 9時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
あ - 初コメ失礼いたします。完結おめでとうございます！緑くんの恋が実って良かったです😭今回も素敵な作品ありがとうございました！ (8月21日 20時) (レス) id: f17f5e7704 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - もともと緑くんが好きだったから、見えない所でも恋人っぽく振る舞ってたのかと思いきや、天然だったのはちょっとビックリ。罪な男…！付き合い始めて、青くん達にも紹介したんだろうなとか、色々妄想したくなっちゃいます。次回作も楽しみにしています。 (8月20日 1時) (レス) id: 22105fbc41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2023年7月14日 22時
