#26 ページ26
頭をなぐられたような衝撃、ってこれか。
ともの書き置きを読み上げる声は震えていた。
「今までありがとう、とうきょうに…行きます…？」
信じられなかった。
信じられなさすぎると笑いがこみあげてくると知った。
「意味わからへん、なんやこれ…ほんま、」
うるさい、と言うように二階から物音がする。
オカンに構う心の余裕はなかった。
「おもろないよこんな冗談。エイプリルフールまでまだ１ヶ月あんねん」
封筒の中身はお金だった。
大学３つ受けるのにかかった受験料、それから第一志望校に入金したはずの入学金。
入学手続き、ともに任せるんやなかった。払わなかったんや。
ダメ元でかけたともの番号は繋がらなくて、当たり前やけど、当たり前なんやけど。
「なんやねん、これ…」
同じ言葉しか出てこない。
壊れたラジオみたいや。
なんで、なんでって頭ん中ぐっちゃぐちゃ。
あぁ、ばちが当たったんや。
これが地獄なんや。
そう思い当たった瞬間、涙があふれた。
・
・
ろくに眠れなかった。そりゃそうか。
変なところで真面目やから、バイトばっくれるとかいう思考にはならなくて、いつもの時間に布団を出た。
一人きりだとやけに広いベッド。枕を思い切り投げつけた。
「オカン、とも出て行った。飯自分で用意するんやで。俺もう仕事行かなあかんからな」
寝癖を直して、歯磨きをする。
当たり前のようにコップに刺さったともの歯ブラシ。
少しだけ開き始めた毛先に、生活感みたいなものを感じた。
「お前も置いてかれたんか、俺とお揃いやな」
歯ブラシにすら声かけて、いよいよ俺頭沸き始めそう。
ため息をつくとそれに被せるように呼び鈴が鳴った。
『郵便局でーす』
遠くで聞こえるその声に、何かを感じた。
ともからかもしれへん、てか、ともからや。絶対。
「ご苦労様です」
見覚えのある文字で書かれたうちの住所。
速達、と赤い印の押された封筒をその場で破るように開く。
『大ちゃんへ
夜、無事に東京に着きました。
心配してるかもしれへんって思って、着いたら連絡しようって決めてました。
寮のある専門学校に入ったので、しばらく寝食には困りません。
携帯を解約してしまったから連絡とられへんけど、また一ヶ月くらいしたら手紙を書きます』
ていねいに、ていねいに書かれた縦長でまっすぐなのにどこか柔らかいともの字。
「手紙書くて…せめて電話くらいしてや、今平成やぞ」
涙を拭って仕事に向かう。
自分が情けなくて仕方がなかった。
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ナナセ(プロフ) - 7129さん» お返事遅くなってしまってすみません💦 コメントありがとうございます。ぜひ最後までお付き合いくださいませ◎ (2022年10月27日 17時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - ナナセさん！待ってました〜🙌読み始める前から胸がぎゅんぎゅん締め付けられてます…月水金、楽しみにしてます！！！ (2022年10月25日 22時) (レス) @page4 id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2022年10月24日 14時
