#19 ページ19
台風シーズンも後半戦に差し掛かって、ようやっとと思ったのに。
連日続く雨にともの調子は右肩下がり。
「しんどい?学校休む?」
「ううん…だいじょぶ、頑張る」
真っ白なおでこに皺を寄せ、ともは苦しそうに言った。
「大丈夫やないやろ?無理せんときや」
痛いの痛いのとんでけ、と念じながら優しく頭を撫でる。
オカンも偏頭痛持ちだって昔言ってたっけ。
ほとんど開かなくなったドア。
それでも俺たちが部屋に戻った頃に風呂に入って最低限の食事はしているらしかった。
「なんか食べたいもんある?買ってくるで」
「大ちゃん学校やろ?」
「出席足りてるもん。看病する」
「そんなんあかん!なおさら学校行く理由できたわ」
よいしょ、と起き上がるも、頭がぐわんぐわんするのかベッドに逆戻り。
「なぁ、今日くらい休も?ニュースでも爆弾低気圧やって言ってたし。りんごすりおろしたん、好きやろ?スーパー行ってりんご買ってくるから」
発熱までは行かないとええけど。
ともが眩しくないようにカーテンをぴっちり閉めて家を出る。
りんごと、ともの好きなゼリーも買って帰ろう。
・
・
「ただいま〜」
一番近くのスーパーからトンボ帰り。
静かに部屋のドアを開くとともは寝ているようだった。
…オカン。
廃人のようになってしまっても、やっぱり心配なもんは心配。
息子のともがああなんやから、オカンも多かれ少なかれ気圧の影響は受けているだろう。
「オカン起きてる?開けてええ?」
ノックをすると珍しく返事が返ってきた。
またやつれたな、と心の中で一人ごちる。
「低気圧すごいから大丈夫かなって思って。何か食べる?」
「…ありがとう」
意外と落ち着いてる。
差し出したゼリーを静かに受け取ったオカンにそんな感想を抱いた。
「あの子は?」
「さっき覗いたら寝てた」
「そう…いらんところばっかり私に似て」
なんて相槌を打つべきか迷ってるうちに、オカンはまた口を開いた。
「嫌になっちゃう。若い頃の私に似てるからってこういちさんもあの子に夢中で」
「…オトンのこと、知ってたんか」
「大体、あの子もあの子よね。拒まなかったら共犯よ」
憎々しげに吐き出された言葉。
信じられなくて頭にカッと血が上った。
「ともあんなに苦しんでんで…!?親に無理やりされて、傷つかないわけないやろ!」
「何よ、大毅もあの子の味方するの?」
この家で、俺が味方しないで誰がともの味方するん?
震えた声は頼りなくて。
…お兄ちゃん、情けなくてほんま嫌なるよな。
423人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナナセ(プロフ) - 7129さん» お返事遅くなってしまってすみません💦 コメントありがとうございます。ぜひ最後までお付き合いくださいませ◎ (2022年10月27日 17時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - ナナセさん!待ってました〜🙌読み始める前から胸がぎゅんぎゅん締め付けられてます…月水金、楽しみにしてます!!! (2022年10月25日 22時) (レス) @page4 id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ナナセ | 作成日時:2022年10月24日 14時