ディア マイ ステディ２【JW 赤×緑】

#61 ページ31

神ちゃんのうなじをそっとなぞると、ひくん、と小さく彼の肩が揺れた。

「俺から、神ちゃんに、お返しのぐちゃぐちゃ」
「…うん」

腕の中に収まって、こっちを見つめるその瞳には、不安と期待が混じったような色。

「あん時…神ちゃんのうなじ噛んだ時、神ちゃんを俺のもんにせなあかんって多分、思ってた」

俺はそれしか頭になくて、むしろ何も考えてなかったっていうのが一番正しいのかもしれない。

「神ちゃんが怖がってるのわかってたし、駄目なことやってわかってた。けど、そういうの全部振り切って、気づいたらうなじ噛んでた」

それからずっと、神ちゃんに抱く気持ちは全部本能に支配されてるみたいで怖かった。
また間違いをおかすんじゃないかって、独占欲や嫉妬心で、また傷つけてしまうんやないかって。

「頭と心が別のところにあるみたいやった。こうすべき、を心が拒否して、こうしたい、を頭が却下する。なんかな、うまくいかへんのがずーっと続くとそれが当たり前になんねんな」

15年間変わらず、俺の本能が守り続けてくれた感情。
神ちゃんが好きで、神ちゃんを手に入れたいという、少し歪で、やけどどうしても手放せない青い感情。
それすら無視することが得意になってた。

「不甲斐ないところばっかりでごめん。この15年間、神ちゃんのことたくさん傷つけたよな」

中途半端な優しさで神ちゃんを縛り付けて、一番大事なときには手を伸ばさない。
自分に都合の良いことばっかりで、神ちゃんから逃げてばっかりで。

「俺、これからも神ちゃんの隣にずっと居たい。それはこの15年間の贖罪やなくて、俺が神ちゃんのこと好きやから。神ちゃんが大好きな番やから。…俺のこと、許してくれる？」

神ちゃんは小さく笑うと、俺のでこにキスをする。
案外キス魔らしい。
俺は柔らかい唇が押し当てられるたびに、くすぐったい気持ちになる。

「許さへん」
「へ、」
「やって怒ってへんもん。怒ってなきゃ、許すこともできひん」

神ちゃんは得意げに俺の顔を伺う。

「あー！もう！そんな可愛い顔されるとあかん」
「わ！しげがまたゴング鳴らそうとしてる！」

わざとらしく逃げ出そうとする細い手首をシーツに縫い留める。

「…俺、オメガに生まれて良かったって初めて思った」

神ちゃんの瞳は凪いで穏やかな色をしていた。

「しげに出会えてほんまに良かった。しげが番で、ほんまに幸せや」

ありがとう。
俺の耳元で聞こえたその優しい声音。
たまらくなって、強く抱きしめた。


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【ディア マイ ステディ／fin】

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