ディア マイ ステディ２【JW 赤×緑】

#55 ページ25

「今日のゲストはこちらの方々です」

司会をつとめる女性アナウンサーの言葉にお願いしまーす、と頭を下げる。
生放送の音楽番組、しかもテレビ初披露。
緊張は勿論するけれど、このソワソワする感じが俺は嫌いやない。

「この曲は重岡さんと神山さんがダブル主演をなさってるドラマの主題歌なんですよね？」
「はい、そうなんです。二人でデコボコバディやってます！絶賛放送中です！」

カメラに向かってピースすると、隣の神ちゃんも同じように。
横で“よっ！かみしげ！”なんて茶々が入る。

「仲間想いな歌詞と、ダイナミックな振り付けにも注目です____」

アナウンサーの曲紹介の後、イントロが流れ始める。
向き合う形の神ちゃんは、優しく、やけどどこかぎらついた瞳で俺に微笑みかけた。


・


こうしてると神ちゃんのこと、すっごくわかる気がするのにな。

ほんまに踊るのが好きなこと。

ここの振り付けが特にお気に入りなこと。

今の目配せは、いつも俺が次の位置どり間違えそうになるから。

きちんと位置につけば、神ちゃんは安心したように微笑む。

ぴったり重なる俺らの声。

こんなにも近いのに。


・


生放送のライブ感がそうさせたのか、体がまだ火照ってる。
流星の次の仕事の兼ね合いで、神ちゃんと二人で同じ車になった。

都会の夜は明るい。
信号が、ブレーキランプが、ビルの明かりが、車の中に入り込んで時折神ちゃんの輪郭をはっきりさせる。

「そんなに見つめられると穴開く」

すっと神ちゃんの白い手が俺の視界を遮った。

「ええやん、ピアス増えるで」
「何言ってんねん。笑」

あと数日すれば神ちゃんにまたヒートがくる。
前回の周期が狂ってたから心配してたんやけど、今日はまだ顔色もいい。

「そういえば、この間ラジオ聞いた」
「え？なんの？」
「しげと流星の。ドラマの話してたやつ」

その言葉で一気に記憶がよみがえった。

"神ちゃんと仕事すると、ええとこ見せたいなとか、負けたくないなとか、思って。"
"撮影現場ではカッコいい、頼もしい相棒としてやって行きたいなあとか思うわけよ。"

神ちゃん真面目やし、メンバー好きやから結構ドラマもバラエティも見てるって知ってるけど。
ラジオも守備範囲なん？涙

「ちょ、忘れて、」
「嬉しかった」
「え、？」
「嬉しかってん。そうやってしげが思ってくれてたこと」

ありがとう、って神ちゃんは言う。
俺を避けずに真っすぐ笑いかけてくれるんは、神ちゃんも音楽番組の高揚感に飲まれているからかもしれない。

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