#36 ページ6
いっそのこと、こっちから。
そう思っていた時期に友人が振られたことを知った。
やっぱり女の子のほうが良いわ、お前よりも。
きっと、友人が一番傷つく言葉。
泣き笑いみたいな顔で元恋人の話をする友人を見て、大毅のことを思い出した。
いつか、同じ言葉で振られるような気がする。
結局、何か血迷っただけかもとか、もしかしたらあの日合コンに参加していた女の子たちがちょうど大毅の好みやなくて、俺は妥協かもせぇへんって。
今日で終わりにしよう。
引っ越すことになったとか、適当な嘘をついて逃げよう。
そうでもしないと、本気の本気で彼を好きになってしまったら、そしてその先に振られる未来が待っていたら、俺は立ち直れないって思った。
「イタリアン、嫌いやった？」
気遣う視線。
カラオケの時に見た表情にそっくりでちょっとだけ笑いそうになる。
「ううん、すごく美味しい」
なんて言おう。
引っ越す、ってどこに？仕事はどうするの？
自分で考えた言い訳はあまりに詰めが甘くてすぐにボロが出そうやと思った。
「神ちゃん、」
「何？」
「俺のことどう思ってる？」
「え、どうって」
「デート誘ったら来てくれるし、話してて楽しそうにしてくれるし、正直期待してんねん」
友達としか思えないって言われたら諦める。振られたらもう、会わないから。
潔すぎる彼の言葉に動揺して、もう会えないのは嫌やって言いたくなって。
でも頭ん中、友人に止められてるような気がしてならなくて。
ぐるぐる。
せっかく美味しいはずのご飯の味に意識がいかない。
縋るような大毅の視線に耐えられなくて俯いた。
「その話はお店出てからしたい」
「…そっか」
・
あ、もうすぐ20時になる。
駅に向かう途中の道で気が付いた。
門限、みたいな19時を超えて、俺と彼の関係は変わろうとしてる。
これから一緒になるか、もう一生会わないか。
「さっきの話やけど」
「うん」
彼の声がわずかに強張る。
緊張してるのは俺だけやない。
じゃあ本気で好きなのは？
それも、俺だけやないのかな。
「俺、男やで」
何をいまさら、みたいな顔された。
「神ちゃんは男じゃ嫌？」
「…しげは男の恋人できたことある？」
「ない、けど」
やっぱり、この人と結ばれたらいけないと思う。
今ならまだ引き返せる。
「じゃあ、」
やめようよ。
続くはずだった俺の言葉を塞いだのは大毅の唇だった。
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ナナセ(プロフ) - ナナイロさん» コメントありがとうございます。もったいないほどの褒め言葉！嬉しいです涙 次回作もぜひよろしくお願いいたします◎ (2021年10月19日 11時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - ななはちさん» コメントありがとうございます。ちょっと捻った始まりにしたかったのですが、無事に楽しんでいただけてよかったです◎ ぜひ次回作もお付き合いくださいませ！ (2021年10月19日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
ナナイロ(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初から最後まで全部が好きでした！最後は幸せなかみしげが見れてキュンキュンしました♪次回作も楽しみに待ってますね！ (2021年10月18日 19時) (レス) @page32 id: e8246d4427 (このIDを非表示/違反報告)
ななはち(プロフ) - おまけの完結、おめでとうございます！！別れる所から始まるお話、どうなるんやろって思いながら読みすめて、最後は｢そうきたか！｣と言ってしまう位の展開で最高でした！次のお話はオメガで…楽しみにしてます！！！ (2021年10月18日 14時) (レス) @page32 id: ef79629cea (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - りえさん» コメントありがとうございます。こちらこそ毎日お付き合いいただきありがとうございました！番外編もよろしくお願いします◎ (2021年10月17日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2021年9月25日 11時
