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#34 ページ4

各駅停車のガランとした車内に二人、隅っこの席に腰かけた。
終電間近の電車は疲れて眠るサラリーマンが少しいるだけ。
明日、遅番で良かった。
隣に座るこの人は朝早いんやろか。
そう思ったけど、答えを聞いてどうこうなるわけじゃないからやめた。

「幹事のカンジでーすって挨拶、ぶっちゃけすべってたよな」
「先輩の悪口は言えない」

すべってた。大いにすべってた。
女の子たちは全く笑ってなくて、俺は気を使って笑った。
ちなみに、手ごたえなんてないはずやのに、先輩は三,四回同じネタをした。

「ええ子ちゃんやな」
「じゃあ、しげは悪い子や」

からかうみたいな声のトーンに少しムッとして、反射的に言葉を返した。

「なんで?カンジの悪口言うから?同期やで、こんくらい言ってもバチ当たらへん」
「違くて。俺のこと、逃げる道具に使ったやろ。合コン来たのに相手をろくに知ろうともしないの、マナー違反やで」

何のこと、ととぼけて見せる彼に言い返す気が起きなくて黙る。
そうしたら堪忍したようにあっちが口を開いた。

「じゃあ、神ちゃんのことが気になって追いかけてきたって言ったら満足?俺の最寄りに着く前に早よ連絡先聞かなって今現在も焦ってるって」
「そんなん、」
「悪いけど本気やで。だから、カラオケで話しかけた。神ちゃんのこと知りたかったから」

彼は俺の持っていないたくさんのものを持っている人だとその時は思った。
俺ならこんな口説き文句みたいなこと絶対言えへん。
そう思ったけど、今ならわかる。
大毅の顔、すごく緊張してた。
突き放されるのが怖いって顔してた。
それを精いっぱいの強がりの表情で隠してただけで。
思い返すと、その真っすぐな健気さが愛おしくて、結局そういうところは俺にはないもんやな、と同じ結論に落ち着く。

「…連絡先、交換する?」
「え、いや、え」
「そっちがしたいって言うたくせに」
「やって拒否られると思った」

大毅が電車を降りていった後、俺はこっそりカラオケで大毅が好きやと言ってたアーティストの曲を聴いて帰った。

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ナナセ(プロフ) - ナナイロさん» コメントありがとうございます。もったいないほどの褒め言葉!嬉しいです涙 次回作もぜひよろしくお願いいたします◎ (2021年10月19日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - ななはちさん» コメントありがとうございます。ちょっと捻った始まりにしたかったのですが、無事に楽しんでいただけてよかったです◎ ぜひ次回作もお付き合いくださいませ! (2021年10月19日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
ナナイロ(プロフ) - 完結おめでとうございます!最初から最後まで全部が好きでした!最後は幸せなかみしげが見れてキュンキュンしました♪次回作も楽しみに待ってますね! (2021年10月18日 19時) (レス) @page32 id: e8246d4427 (このIDを非表示/違反報告)
ななはち(プロフ) - おまけの完結、おめでとうございます!!別れる所から始まるお話、どうなるんやろって思いながら読みすめて、最後は「そうきたか!」と言ってしまう位の展開で最高でした!次のお話はオメガで…楽しみにしてます!!! (2021年10月18日 14時) (レス) @page32 id: ef79629cea (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - りえさん» コメントありがとうございます。こちらこそ毎日お付き合いいただきありがとうございました!番外編もよろしくお願いします◎ (2021年10月17日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナナセ | 作成日時:2021年9月25日 11時

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