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結局、シュウがまぁ起きひんから運転だけ交代してサービスエリアを出た。
無理やり起こしてまでご飯食べさすんも違うかなって。
代わりに、お腹が空いて起きた時のためにおにぎりを買った。
「寂しいなぁ。シュウとともの思い出背負って、あの部屋住み続けようかな」
助手席に座った大毅は、ラジオの放送局をいじりながら言葉を紡ぐ。
「えぇ、一人じゃ家賃結構高いで」
「ん。知ってる。でも俺、他にお金使うところもないし」
元々俺は自分の都合で家を出るから、大毅の次の家が見つかるまでは家賃の半額を入れようと思ってた。
今も家賃やら光熱費やらは折半やし。
急に全部自分一人でってなったら、お金しんどいやろから。
「とも。俺、今日ほんまに楽しかった。夢みたいやった」
前の車のブレーキランプが点灯する。
少しずつ減速していく動きに合わせて、俺もそれにならう。
「でも、どうせならユニバにすれば良かったかも。最後に行きたいなって思ってたから」
「確かに。今日の遊園地も十分楽しかったけどな」
大毅のしたかったこと。
新しくできるパン屋さんに行くこと、お花を買うこと、ユニバに行くこと。
「なんかな、今なら何でもできる気がすんねん。シュウを口実にして、色んなところ遊びに行って、美味しいもん食べて」
ま、今日が最終日やねんけどさ。
大毅は切なそうに笑う。
「シュウのため、シュウが行きたいからって言ったら、とものことたくさん連れ出せる気がする。ともの隣にずっと居れる気がする」
「……まぁ、その口実には確かに弱いかも」
可愛くないことしか言えない俺の口。
ほんまは、わざわざ言い訳しなくても、俺はきっと大毅についていってまうのに。
「なぁ、俺ら、もうこの子居らんとやり直せへんのかな」
「……」
「シュウは明日帰るけど、俺たちまた一緒に暮らせへんの?」
向けられた視線に応えることができない。
今、目を合わせたら考えてること、思ってること、全部見透かされてしまいそう。
先の道路を睨みつけるようにして、そこから目を逸らさない。
渋滞、早く解消されへんかな。
「なぁとも、」
「…結婚ってさ、すごく素敵やと思わない?」
「え?」
「俺は大毅に結婚してほしいなぁって思うよ」
「……」
「明日、荷造り手伝ってくれる?」
じわじわと動き始めた道路。
大毅の返事を聴きたくなくて、カーステレオの音量ボタンに手を伸ばす。
「とも。一生のお願い、聞いて」
だけど、音を上げることは叶わなかった。
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ナナセ(プロフ) - ナナイロさん» コメントありがとうございます。もったいないほどの褒め言葉!嬉しいです涙 次回作もぜひよろしくお願いいたします◎ (2021年10月19日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - ななはちさん» コメントありがとうございます。ちょっと捻った始まりにしたかったのですが、無事に楽しんでいただけてよかったです◎ ぜひ次回作もお付き合いくださいませ! (2021年10月19日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
ナナイロ(プロフ) - 完結おめでとうございます!最初から最後まで全部が好きでした!最後は幸せなかみしげが見れてキュンキュンしました♪次回作も楽しみに待ってますね! (2021年10月18日 19時) (レス) @page32 id: e8246d4427 (このIDを非表示/違反報告)
ななはち(プロフ) - おまけの完結、おめでとうございます!!別れる所から始まるお話、どうなるんやろって思いながら読みすめて、最後は「そうきたか!」と言ってしまう位の展開で最高でした!次のお話はオメガで…楽しみにしてます!!! (2021年10月18日 14時) (レス) @page32 id: ef79629cea (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - りえさん» コメントありがとうございます。こちらこそ毎日お付き合いいただきありがとうございました!番外編もよろしくお願いします◎ (2021年10月17日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナセ | 作成日時:2021年9月25日 11時