#42 ページ12
「あれ、どしたん」
「今日はお客さん、です」
二人を見送って、家事を諸々片付けた後、アルカンシェルに来た。
レジには淳太さんが立ってた。
「珍しいですね。淳太さんがレジ立ってるなんて」
「今流星とのんちゃんは休憩行くところ」
「一人で大変やないですか」
「この時間はあんまり人入らんからなぁ」
そうは言うけど、ショーケースの中のケーキはちらほらと減っていた。
やっぱりうちは売れっ子のケーキ屋なんやな、ってちょっと嬉しくなる。
「まだ二人ともバックヤード居ると思うで。せっかくやし声かけてきたら？」
「そうします」
何も声をかけずに帰るのも水臭いし、淳太さんの言葉通りにバックヤードへ向かう。
「そんなん無理やろ」
バックヤードのドアに手をかけようとした時、中からのんちゃんの声が聞こえてきて動きを止めた。
なんかお取り込み中？
「これから先、好きな人も作らんと一人で生きていくなんて無理や」
「…本人はもう恋しないって言うてたけど、違うと思う」
「じゃあ流星を振る言い訳？」
「いや…」
あ、これ俺の話、か。聞かない方がええやつやん。
背を向けた俺の背中に聞こえてきたのは流星の言葉。
「ずっと、恋し続けるんやと思う。元彼に。 神ちゃん、まだその人のこと好きやねん」
「そう言ってたん？」
「言われなくてもわかる」
…、
今すぐドア開けて、そんなことないって言ったらええのかもしれない。
否定しなきゃ、二人に言わんでも、せめて自分の心の中でだけは。
もう大毅のこと好きやないって。
「あれ、神ちゃん」
「何かお取り込み中やったみたいで、声かけられませんでした」
「そっか」
へらってわざとらしい笑顔を見せると、淳太さんは何か言いたげなまま頷いた。
「あいつら、なんだかんだ仲ええよなぁ」
「ですね」
シューアイス買って帰ろ。
冷凍のショーケースの前に立つと淳太さんは再び口を開いた。
「…神ちゃん。気にすぎたあかんで」
「え、何ですか急に」
「いや、あいつらの会話、こっちにも聞こえてたから」
「あー…」
「二人の言うこと、あいつらも神ちゃんのことよう見てるから一理あるとは思うけど」
でも、難しいこと考えんと自分のしたいようにすればええよ。
淳太さんの優しい言葉を聞いて、頭の中で考える。
自分のしたいように。何したいかなぁ。
…大毅とパン、食べたいかも。今度コンビニの隣にできるっていう。
叶わない願い事を考えて思わず苦笑い。
今度こそシューアイスを手に取った。
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ナナセ(プロフ) - ナナイロさん» コメントありがとうございます。もったいないほどの褒め言葉！嬉しいです涙 次回作もぜひよろしくお願いいたします◎ (2021年10月19日 11時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - ななはちさん» コメントありがとうございます。ちょっと捻った始まりにしたかったのですが、無事に楽しんでいただけてよかったです◎ ぜひ次回作もお付き合いくださいませ！ (2021年10月19日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
ナナイロ(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初から最後まで全部が好きでした！最後は幸せなかみしげが見れてキュンキュンしました♪次回作も楽しみに待ってますね！ (2021年10月18日 19時) (レス) @page32 id: e8246d4427 (このIDを非表示/違反報告)
ななはち(プロフ) - おまけの完結、おめでとうございます！！別れる所から始まるお話、どうなるんやろって思いながら読みすめて、最後は｢そうきたか！｣と言ってしまう位の展開で最高でした！次のお話はオメガで…楽しみにしてます！！！ (2021年10月18日 14時) (レス) @page32 id: ef79629cea (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - りえさん» コメントありがとうございます。こちらこそ毎日お付き合いいただきありがとうございました！番外編もよろしくお願いします◎ (2021年10月17日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2021年9月25日 11時
