・ ページ31
「俺、ともと交際してる。もう七年弱。ずっと同居人って言って来たけど、彼は俺の恋人やねん」
電話の向こうのお姉さんの声は聞こえない。
黙っているのか、大毅に何か言葉が届いているのかわからなくて。
大丈夫やでって励ますように、大毅は手を握る力を強めてくれた。
「……うん、ありがとう。オカンとオトンにはまだ言ってないねん」
「外堀？人聞き悪いわ。笑 まぁ、予行練習の気持ちはあったけど」
だいじょうぶ。
口パクで俺に告げて、にかって笑うから、思い切り抱きしめてしまった。
「ぅおっ、良かったなぁ。俺もすっげぇホッとした」
「うん…」
「今、保留やねんけど、ともも姉ちゃんと話してくれへん？」
渡されたスマホの保留を解除する。
大毅のお姉さんの快活な声が耳に届いた。
『神山くん。まずは…アホな大毅のこと、選んでくれてありがとうね』
緊張して、いや、とか、あの、とかしか出てこない。
それを笑うお姉さんの声のトーンが大毅にそっくりで。
兄弟ってすごいなぁ。
『ほんまは、ずっとそうなんじゃないかなーって思ってたの。あいつ、友達が少ない訳やないけど、経済的な理由だけで誰かと一緒に住むようなタイプやないから。もしかしたら、大毅にとって神山くんってすごく特別な存在なのかなぁって』
「お見通しやったんですね…、」
『やからこそ、シュウのことを預けたいって思った。ただのシェアハウスなら、こんな大変なことよう言わんけど、二人ならきっとシュウのこと大切にしてくれるって思ってたよ。実際、シュウも楽しかったって言うてる』
神山くんから伝えたいこと、何かあるかな？
その言葉に、一番聞きたかったことが口をついて出た。
「あの、旦那さんって…」
『あの人、なんかした？』
「…旦那さんは俺らのこと、受け入れてくれるでしょうか」
電話のことを言うつもりはない。
けど、俺と大毅が付き合っていることをお姉さんが知って、一番の懸念はこれ。
『今、海外赴任してるって言うたやろ？頭の硬い人でさ。海外行く前なら多分、無理やった。神山くんも大毅も何も悪くないのに、申し訳ないんやけどな。けど…少しずつ融通利くようになってきたし、時間かけていけば大丈夫やと思う』
ま、旦那が二人の仲をどうこう言う筋合いはないけどねぇ。
と朗らかにお姉さんは話を締めくくった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 578人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナナセ(プロフ) - ナナイロさん» コメントありがとうございます。もったいないほどの褒め言葉！嬉しいです涙 次回作もぜひよろしくお願いいたします◎ (2021年10月19日 11時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - ななはちさん» コメントありがとうございます。ちょっと捻った始まりにしたかったのですが、無事に楽しんでいただけてよかったです◎ ぜひ次回作もお付き合いくださいませ！ (2021年10月19日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
ナナイロ(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初から最後まで全部が好きでした！最後は幸せなかみしげが見れてキュンキュンしました♪次回作も楽しみに待ってますね！ (2021年10月18日 19時) (レス) @page32 id: e8246d4427 (このIDを非表示/違反報告)
ななはち(プロフ) - おまけの完結、おめでとうございます！！別れる所から始まるお話、どうなるんやろって思いながら読みすめて、最後は｢そうきたか！｣と言ってしまう位の展開で最高でした！次のお話はオメガで…楽しみにしてます！！！ (2021年10月18日 14時) (レス) @page32 id: ef79629cea (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - りえさん» コメントありがとうございます。こちらこそ毎日お付き合いいただきありがとうございました！番外編もよろしくお願いします◎ (2021年10月17日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ナナセ
| 作成日時：2021年9月25日 11時
