#55 ページ25
「ちょっと寄り道」
大毅の服と、俺のピアスを買って。
このまま家に帰るのかと思ったら、大毅の運転する車は途中で右に曲がっていく。
「え、どこ行くん?」
「ええからええから」
こんな道、初めて通る。
家のまあまあ近くやねんけど、俺も大毅も生活圏を駅の方にばっかり伸ばしてるから。
「〜♪」
ご機嫌な大毅が口笛吹きながらアクセルを踏む。
大毅の好きな曲。大毅のお陰で、俺も好きになった曲。
「とも、今日ありがとな」
「こっちこそ。楽しかったで」
「初デートの時と、変わらんところも変わったところもあって、なんか…付き合ってきた年数の重み、感じたわ」
そろそろ着くで。
大毅がそう告げたのは、大きな公園の入り口。
・
「ここ、絶景スポットらしいで」
「ほんま…綺麗なぁ」
丘の上の高台まで登ると、夕陽に照らされた住宅街が見えた。
俺と大毅の家も、アルカンシェルも小さくやけど見える。
「今日は昔をなぞる一日やないん?」
「うん、たくさんなぞった後は、新しい一歩やなと思って」
へへって笑う大毅。
それが夕陽に相まって温かくて、愛おしくてたまらなくなる。
目に焼き付けておかな。
この新しい一歩は、俺と大毅の歩む最後の新しい一歩。
シャッターを切るみたいに、ゆっくりと瞬きする。
「とも、」
「ん?」
やけに改まった彼の顔。
それに合わせて、なんだか俺の姿勢も伸びる。
「あのな、これ…受け取って欲しいねんけど」
大毅が鞄から小さな箱を取り出す。
あれ、さっきピアスは買ってもらってその場でつけたはずやけど。
見当がつかなくて、彼を見つめ返せば照れたように舌を覗かせた。
「プロポーズ」
「え、と…」
開いた箱から指輪が顔を出す。
「俺ら、付き合ってない…」
「今日は恋人としてデートの約束やで」
「っ、けど、」
だけど、俺らは明日から、
「俺、やっぱり嫌やねん。ともが隣に居らな。もう、ともの居らん未来想像できひんの」
力の入ってない手を取られて、左手の薬指、優しく大毅が指輪をはめていく。
「何となくわかるよ。ともが考えてること。ほんまは俺もちょっと不安や。親にも何も言えてないし、言ったとして、はいそうですかって認めてもらえる自信もない」
「……」
「けど、な。好きやねんもん。とものこと。大好きやから、簡単に手ぇ離せへんの」
なんで、大毅のが泣きそうな顔するん。
そしたら俺、泣けへんやん。
そう思ったのに。
俺の頬の涙を大毅が拭うから、泣いてたんやって今更気づく。
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ナナセ(プロフ) - ナナイロさん» コメントありがとうございます。もったいないほどの褒め言葉!嬉しいです涙 次回作もぜひよろしくお願いいたします◎ (2021年10月19日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - ななはちさん» コメントありがとうございます。ちょっと捻った始まりにしたかったのですが、無事に楽しんでいただけてよかったです◎ ぜひ次回作もお付き合いくださいませ! (2021年10月19日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
ナナイロ(プロフ) - 完結おめでとうございます!最初から最後まで全部が好きでした!最後は幸せなかみしげが見れてキュンキュンしました♪次回作も楽しみに待ってますね! (2021年10月18日 19時) (レス) @page32 id: e8246d4427 (このIDを非表示/違反報告)
ななはち(プロフ) - おまけの完結、おめでとうございます!!別れる所から始まるお話、どうなるんやろって思いながら読みすめて、最後は「そうきたか!」と言ってしまう位の展開で最高でした!次のお話はオメガで…楽しみにしてます!!! (2021年10月18日 14時) (レス) @page32 id: ef79629cea (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - りえさん» コメントありがとうございます。こちらこそ毎日お付き合いいただきありがとうございました!番外編もよろしくお願いします◎ (2021年10月17日 11時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナセ | 作成日時:2021年9月25日 11時