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“別れよう”
そう告げた時の大毅の表情を、きっと俺は一生忘れない。
真ん丸に見開かれた瞳、少し不機嫌そうに歪んだ眉。
それからすぐに、へにゃ、と笑って、“何言ってんねん”って。
冗談だと言って欲しい、そんな笑顔だった。
「明日、新しい家の管理人さんに挨拶行ってくる」
「…そっか」
大毅と寝るのももう、あと数えるほど。
付き合って6年と半分経った。
最初から幸せがずっと続くわけではないってわかってたけど。
「とも、俺のこと嫌いになった？」
すぐ近くで寝そべる彼の顔が見れない。
真っ暗な部屋で、天井を睨むようにして涙を堪える。
「そんなことないよ」
「じゃあ、」
「圧力鍋、俺が持っていってええ？」
彼の言葉を遮って、話を逸らす。
「…ん。ええよ。俺凝った料理作らへんもん」
寝返りを打つ音が右耳に届く。
「とも。」
「ん？」
「こっち見て」
「なに？」
向かい合ったら思ったよりずっと近くに大毅の顔があった。
鼻先が触れるくらい、近くに。
「俺、来月コンビニの隣にできるパン屋行くの楽しみにしてた。ともがきっと、チョコデニッシュとカスタードデニッシュで迷うから、両方買って二人で半分こするの」
「…、」
「あとな、ユニバ。しばらく行ってないやろ？二人で行きたかった…」
「な、んでそういうこと言うん」
「何で泣くん？」
大毅の人差し指がそっと俺の頬を撫でる。
「そんな悲しそうな顔しないでやぁ」
「させてるの、大毅やん」
「俺がしてるのは楽しい話やろ？」
「どこがや、」
そんな、叶わない未来なんて。
「そういえば、一回も花買わなかったなぁ。ほんまは花屋の前通るたびにともが興味持ってたの、知ってたのに」
やめてよ。離れたくなくなる。
ずっと、揺らいで、嫌で、離れたくなくて、新しい部屋の契約をしたのも半ば衝動や。
「もしかして、それ根に持ってるん？」
「ちが、」
額にそっと温もりが触れる。
でことでこ。大毅の頭は硬いから、事故ってぶつかると痛かった。
「ごめん。問い詰めるのはもうやめる」
「このまま寝るん？」
「ともが嫌やなければ」
「おでこより…手、繋ぎたい」
俺の言葉にしげがくしゃっと顔を歪ませる。
それが、無理やり作った笑顔だとわかるのに少しだけ時間がかかった。
指の間に入り込む大毅の体温。
俺よりちょっと小さくて、少しふくふくしてる柔らかな手。
「おやすみ」
「ん、おやすみ」
俺の気持ち、大毅は気付いてるんやろか____
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ナナセ(プロフ) - りっつさん» コメントありがとうございます◎ ぜひ床を転げ回っても大丈夫なところ(?)で閲覧してください！笑 (2021年8月31日 11時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
りっつ(プロフ) - ああもうすでに好きすぎて涙出そう。ここ、飯屋ですが床を転げ回りたいです。 (2021年8月30日 12時) (レス) id: d038e49da9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2021年8月27日 11時
