鍵と二人と1LDK【JW 赤×緑】

#07 ページ7

神山が俺の家に来てから初めての休日。
最低限の荷物(というか、仕事に持っていくもの)しか現状手元にない神山の、生活用品を購入することになった。

「まず第一優先は布団やな。ベッドは流石に置けへんけど…」
「ソファで全然大丈夫ですよ、ほんま！」
「んなわけ無いやろ。腰痛いのバレてるで」

ゲッて表情。
ここ数日、歩く後ろ姿に違和感を覚えていたからこれだけは絶対に買わなあかん。

「そういう変なところで遠慮しなくてええから」
「変やないです。遠慮するのが常識でしょ」

…変なところで、頑固。

「あ、服！ワイシャツ類、そろそろ自分専用のが欲しいやろ」
「それはたしかに…先輩のは結構くたびれてます」
「え」
「嘘です笑」

いや、ほんまは手入れちょっとサボってんねん。
くたびれてる可能性はかなり高い。気をつけなあかん。

神山の家に帰れない理由を知らへんから、不謹慎かなぁと思って言えへんけど…何か、ええなぁ。
心の中で新婚さんを想像して、慌ててやめる。


・


「買い物付き合ってもらって、ありがとうございました」
「いいえー」
「同棲始めるカップルみたいで、ちょっと楽しかったです」
「そりゃ良かった」

反射的に適当な返事をしたけど、内心焦った。
同じこと考えてて嬉しい、と、男が苦手な神山からそんな言葉が出てくるなんて、と。
二つの感情が急に襲いかかってきたもんやから、思わず声が上ずる。

「先輩、風呂のことなんですけど」

早速今日買ったものを荷解きしながら、神山はぽつりと呟くように言った。

「ああ、うん」
「毎回外出てもらうの、すごく申し訳なくて。やめにしようと思います」
「風呂は入ったほうがええよ」
「…！？わかってます！やめるのは風呂やなくて、先輩に外出してもらうこと」

同居を始めて一週間弱。
神山、俺に迷惑かけられないって焦って克服しようとしてくれてたんやけど…なかなか身体はついていかへんみたいでしんどそうやったから。
思ったより克服が早くてちょっとびっくり。
…んー、荒療治感は否めないけど。

「そっか」
「はい。お願いします」

ぺこり、と律儀に頭を下げる神山。
これから俺は、神山の信頼を裏切らないために更なる禁欲に努めていかなきゃならない。

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