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橙屋での夕食を終えて帰宅する。
もちろん出迎えてくれる人なんて居ない、真っ暗な部屋。
電気をつけると玄関に置いてある鏡に疲れた表情をした自分の顔が映ってげんなりする。
「…あ、洗濯物干しっぱなし…」
げんなり、三倍。
雨が降り始めたのは退勤する頃…というと、三時間くらい雨に打たれていたわけか。
…回し直しは確定やな。
重い足取りでベランダに出れば、また雨足が強まっていた。
「もー最悪や」
洗濯物の雫が廊下にぽつぽつと落ちる。
くっそ、ベランダで絞ってからにすれば良かった。
てか、絞れるほどってどんだけ降られてんねん。
第二弾は雑巾絞りの要領で水気を取ることに。
何となく外を見ると、フラフラと危なっかしい足取りの人影が。
傘さしてへんし心配やなぁと思いながら見守っていると、そいつは顔を上げた。
「……か、みやま」
暗いせいで色白なのが目立つ。
俺のことが見えたのだろう彼は、パシパシと数回瞬きをして頭を下げた。
「そんなところで何してんねん。傘は?」
帰ってきたのはぎこちない笑み。
…あー、もう、埒があかん。
「そこで待ってろ」
普段なら見て見ぬふりをするところやのに。
そんな声をかけてしまったのは、後輩を見過ごせないという優しさか、はたまた下心か。
・
「ほんま、すんません…」
「別にええよ。これ使って」
玄関先で一先ずタオルを渡す。
申し訳なさそうにチマチマ髪の毛を拭くもんやから、代わりにやろうと手を伸ばした瞬間、彼の肩がわかりやすくはねた。
「あ、ごめん」
「いえ…」
何考えてるか分からん怖い教育係が急に手ぇ伸ばしてきたらそりゃビビるよな。うん、知ってた。(自分で言って自分で少し傷ついた)
「家こっちの方なん?」
「ちゃいます。今日はここの駅のビジネスホテルに泊まるつもり、です」
「…何か訳アリ?」
「まぁ、そんなところです」
あかん、聞いておいてその後の話の展開考えてへんかった。
やっぱり喋るのは苦手や。
「とりあえず、シャワー浴びてったら?そんなびしょ濡れじゃホテル入れへんやろ」
俺の言葉に神山は難しそうな顔。
「遠慮とか、要らんで」
「はい…あの、入浴中だけ、家を出てもらえませんか」
「は?」
「…すんません!嘘です。俺、失礼しますね」
慌てたように背を向けるから、こっちも急いで引き止める。
「おい!出て行くから、風呂入ってけ!」
自分から出てけって言ったくせに、神山は不思議そうな顔をした。
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ナナセ(プロフ) - mimimiさん» コメントありがとうございます。ご感想いただけてとても嬉しいです◎ そろそろ後半戦に入ります。ぜひお付き合いください! (2021年5月3日 18時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
mimimi(プロフ) - ゆるやかに穏やかに2人が過ごす日々と、密かに幸せと苦悩を積らせる赤さんとまだ気持ちの描写が少なくて読めないなりに赤さんに助けられ癒されてるのを感じる緑さんと、2人が可愛くて大好きです。更新毎日楽しみにしております! (2021年5月3日 16時) (レス) id: cea37b05b2 (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - camokinokoさん» 夜分遅くのお返事で申し訳ありません。嬉しいご感想ありがとうございます! ぜひ更新お付き合いくださいませ◎ (2021年4月18日 0時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
camokinoko(プロフ) - かみしげ可愛すぎます(^^)作者様のご無理のないよう、更新楽しみにしています! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 636c89ef1d (このIDを非表示/違反報告)
ナナセ(プロフ) - かこさん» いつもコメントありがとうございます!ぜひ今回もお付き合いください◎ (2021年4月9日 20時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナセ | 作成日時:2021年4月9日 10時