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きっかけは唐突だった。
「え?」
「「「え?」」」
文化祭が終わって二週間ほど経った火曜日。
修学旅行を楽しみに…する前に、テストがあんねん。
明日でテスト一週間前だと言うのに、しげも流星も勉強してる気配ゼロ。(のんちゃんは隠れ真面目やからやってる。笑)
「…あー、いや、何でもない。で?話、続けてや」
俺らの驚いた顔を見て、しげは誤魔化すように笑う。
彼はさっき、明らかに言った。
“Takaさんって誰?”と。
「しげ疲れてるんちゃう?笑」
俺と流星が固まってる間に、のんちゃんが違和感を流していく。
「てか、さっきの授業さ____」
しげがほっとしたように話題を変えたことに、またもや俺は首を捻った。
・
家に帰ると同時に流星に電話をした。
まだ家帰ってへんかなと思ったけど、それは杞憂のようで。
いや、外にいたことに変わりはないんやけど。
『今ちょうど散歩がてら家出たところ』
「そっか、タイミング悪くてごめんな」
『全然。むしろ歩く暇潰れて良いくらいやわ』
カツカツといかつ目のブーツの音が聞こえる。
前に私服の流星と会った時に履いていたやつやろな。
『それに。俺も気になってたで。しげのことやろ?』
「おん」
『火曜日の記憶は他の曜日に共有されてない。これは、神ちゃんに告白したことを知らない他の曜日のしげで説明がつく』
「で。さっきの言葉は…他の曜日の記憶が、火曜日に共有されてないことを示す、よな?」
『そう思う。まぁ同期されてるなら、火曜日のしげは行動起こしそうやけど』
行動?
おうむ返しにそう尋ねれば、流星はうん、と頷く。
『他の曜日のしげに対して、お前も告れ!みたいな?』
「あー…」
『嬉しくないん?』
「いや、ちゃうけど…。なんか改めて、別の人格なのかなぁって」
体育祭の日にふと思ったこと。
火曜日じゃないしげに別の恋人ができるんやないか。
火曜日のしげみたいな対応をしない他の曜日のしげは、俺のことなんて好きじゃないんやないか。
俺のことを好きって気持ちは全部、火曜日が持っていって、それ以外の彼に俺のこと好きって気持ちは残ってへんのやないか。
『よし、神ちゃん。カラオケ行こか』
「は?」
結論の出ない考え事は、流星の唐突な言葉に遮られた。
『カラオケ。神ちゃんとこの最寄りまで行くから』
「え、や、なんで…」
『言うたやん。神ちゃんわかりやすいって。俺、神ちゃん泣かせたくないねん』
電車乗ったら到着時間教える。
あまりにフットワークの軽い彼に面食らってる間に通話は終了。
「…泣かせたくない、か」
それってどういう感情?
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ナナセ(プロフ) - かこさん» コメントありがとうございます◎ ぜひ次回作もお付き合いください!! (2021年2月19日 13時) (レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 完結おめでとうございます( ; ; )とっても面白かったです!次回作も楽しみにしてます(^^) (2021年2月19日 12時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナナセ | 作成日時:2021年2月2日 10時