#09 ページ9
割り切って受け入れる、ってそう簡単に言いますけども。
藤井くんの言葉を反芻しながら一人で駅から家への道を歩く。
その手しかないことは薄々わかってるけどさ。
割り切るには、俺が抱えるしげへの恋愛感情は重すぎる。
一週間に一日だけ恋人、ってそんなん“もっと”って思ってまう。
今まで何ともなかった当たり前のしげとの距離が遠いって思ってまう。
「俺はこんなに好きやのに、」
「誰が？」
「はっ！？」
思わず呟いた言葉に返事があったもんやから、驚いてバランスを崩してしまう。
それがよく知ったしげの声なら尚更。
「うおっ、危な…！やっぱり神ちゃん、疲れてるんや」
「しげ…部活は？」
「部員の一人が怪我してもうて、解散早くなった」
そこまで大きな怪我やないけど、と苦笑い。
「念のため、照史が病院連れて行くからって」
「そっか」
顧問の桐山先生と同様に、陸上部の部員にもいくらか見知った顔が居る。
ちょっと心配やな…。
「そんな暗い顔せんでや。骨までは行ってないと思うし、近いうちは記録会もないから」
あいつのことやからすぐ復活するで！
そう言ってしげが口にしたのはやはり、俺も知ってる後輩くん。
「そうそう、神ちゃんに会いたがってたで？」
「ほんま？じゃあ怪我の様子見がてら、今度顔出そうかな」
怪我した彼には悪いけど、話が逸れてホッとした。
誰が、なんて当事者のしげからは絶対追求されたくない話題やったから。
「神ちゃんも陸上部、入ればええのに。選手でもマネージャーでも」
「ふふ、遠慮しておきます」
兄弟多いせいで家のこと全部をオカン一人に任せるのは酷やし。
これといってやりたいこともない。
「怪我人出たのは残念やけど、今日早く帰れて良かったわぁ。神ちゃんと帰れるん嬉しい」
な！と笑いかける彼に、ゆうてあと五分もないでと返したのは正真正銘の照れ隠し。
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ナナセ(プロフ) - かこさん» いつもコメントありがとうございます！ ぜひ今作もお付き合いください〜◎ (2020年12月28日 18時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 今回のお話もさっそく大好きになりました。笑 応援してます(^^) (2020年12月28日 14時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2020年12月28日 12時
