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衣装が予定通りに完成して、あとは今日明日で内装。
授業も部活もなし、フルで準備にあたるこの二日間が文化祭当日よりよっぽどアオハルやな、とはのんちゃんの言葉や。
早よ行って準備進めなあかんのに、ピンポンを鳴らしてもしげが出て来ぉへん。
「……遅い」
何してんねんと思いながらもう一度チャイムに手を伸ばす。
『神ちゃんごめん』
「ん？何が」
『今起きた…』
三回も鳴らしてようやっと聞こえた声は、寝起きからかいつもより低め。
『すぐ支度終わらせる。玄関上がってて』
…先に行かせてはくれないんやね。
いや、別に最初から待つつもりやったけど。
「はいはーい」
ドタバタとうるさい洗面所に向かって、焦ると良くないでー、と申し訳程度に声をかけておく。
・
「ごめん！ほんまお待たせ！」
「ん。待ちました。笑」
しげの手にはいつもはない鍵。
「駅まで自転車で…良いですか？乗せるんで…」
その言葉に時刻を確認すれば、なるほど歩きやと間に合わへんな。
「安全運転でお願いします」
「そりゃもちろん！」
ほら神ちゃん乗って！とやけにテンションが高い。
「いやぁ、一回くらいやってみたかってんな。自転車二人乗り！」
「もう、はしゃいでる時間ないで笑」
ちゃんと捕まってな！と嬉しそうな声。
鉄の部分を握ると、秋の朝というのもあって少し冷たい。
「ちゃう、俺の身体」
「えぇ…」
「もう、何躊躇してんねん。俺と神ちゃんの仲やろ？」
最後の抵抗とばかりに肩に乗せた手は、すぐに腰まで誘導されて。
「いざスピード出したら絶対怖がってぎゅーしてくるからな笑」
「っ、そんなんせぇへんし！」
「どうかなぁ？」
ちょっと意地悪な笑みを浮かべて、しげはペダルを漕ぎ始める。
ひゅん、と微かに風を切る音がしたかと思えば、スピードはどんどん上がっていく。
…うわ、思ったよりも、
「神ちゃん頑固やなぁ」
「安全運転にしろって言うたやろ！？」
「んー、これでも安全なつもり」
坂というにはあまりに緩やかすぎる傾斜も手伝って、いや、ほんまちゃんと怖い。
ハンドル握ってれば何ともないのに、と心の中で言い訳をして。
「…ふふ、やっとや。じゃあもう少しスピード上げるで」
俺より少し高いしげの体温が、腕にじんわりと伝わってくる。
加速する心臓の音に気づかないふりをした。
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ナナセ(プロフ) - かこさん» いつもコメントありがとうございます！ ぜひ今作もお付き合いください〜◎ (2020年12月28日 18時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 今回のお話もさっそく大好きになりました。笑 応援してます(^^) (2020年12月28日 14時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2020年12月28日 12時
