#29 ページ29
「お、戻ってきた。体調大丈夫？」
「ありがと。大丈夫やで」
流星は飄々とそう言うと、応援席に腰を下ろす。
「でもしげ、災難だったよなぁ」
「え？」
「いや、借り物競走」
災難という割に、のんちゃんは若干にやけてる。
「女子が男子に声かけて、しかもそれがクラス1可愛い子で、すっごい盛り上がってたのに…お題、クラスでうるさい子、やって」
あー堪らん、グラウンド全員ずっこけるかと！
思い出してまたのんちゃんはゲラゲラ笑う。
「あぁ…しげ、声大きいもんな…」
…としか、言えない。
ほんまはちょっと、ホッとした。
「しかも走り終わったら神ちゃんも流星も居らんから、飼い主見失った子犬みたいやったで笑」
「えぇ、俺ら飼い主ちゃうやろ笑」
「いーや、保健室居るって言ったらすぐ走ってったもん」
そんな話をしていると、スタートの合図。
しげは四走やから、まだ出番まで時間がある。
応援団長に促されて、席を立って応援。
この瞬間が一番体育祭、って感じがするよな。
・
しげの手にバトンが渡った時、赤組は最下位の三位。
二走の子が転けてしまったのもあって、一位、二位とはかなり引き離されてる。
「しげ！！」
走ってる時にする本気の表情。
笑ってないと意外と怖い顔に見えるんやけど、俺は案外それが嫌いじゃない。
逞しくて、闘志に燃える目。
「いけ！！頑張れ！！」
前との差はどんどん縮まっていく。
流石、陸上部エースの名前は伊達じゃない。
「抜かした！」
のんちゃんの弾んだ声。
二位に躍り出たことで応援団の声も太鼓も一層盛り上がる。
そして、バトンを渡す直前に先頭を捉えた。
「いける、」
一位でバトンを渡した。
しげの次に走るのは三年生で元陸上部の先輩。
引退後のブランクなんて全く感じさせない初動で、二位を引き離して行く。
「しげ！！やったやん！！」
有言実行。
声をあげれば、しげはこっちに向かって力強くガッツポーズを見せた。
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ナナセ(プロフ) - かこさん» いつもコメントありがとうございます！ ぜひ今作もお付き合いください〜◎ (2020年12月28日 18時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 今回のお話もさっそく大好きになりました。笑 応援してます(^^) (2020年12月28日 14時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2020年12月28日 12時
