#25 ページ25
「あ、神山くん、重岡くん！」
二人三脚の招集がかかって、向かおうとしたところで引き止められた。
声の主はクラスメイトの女の子で、俺らをちょいちょいと手招く。
「何？」
「二人三脚やろ？これ、付けて」
これ、と彼女が指差したのは、ネズミの耳。
「毎年女子の二人三脚の仮装が恒例やんか？うちらやりたかってんけど、抽選落ちてもうたから代わりにつけてくれへん？」
「いや…ちょっと厳しいものがあるんちゃう…？なぁ、しげ」
片方は魔法使いの青い帽子やけど、片方は赤いリボンやからな。
「え？俺は良えと思うけど。行事ごと感あって楽しいやん」
「ちょ、」
「ほな借りるわ！ありがとなぁ」
ほい、神ちゃん。
そう言ってしれっと差し出されたのはリボンの方。
「何で俺がこっちなん」
「神ちゃん似合ってるから大丈夫やって。可愛いよ」
「全然嬉しない！」
でもまぁ、周りを見たら結構耳つけてたり、服変えてたりする人も居って安心。
俺らの隣のレーンの人なんて、配管工兄弟のコスプレがっつりしてるし。(女の子なのは俺だけやけど！！)
「じゃあ紐結んでくださーい」
委員の言葉に、しげがかがむ。
きゅ、と離れないように繋いでくれて、そのまま肩に腕が回った。
「絶対一位取るで、神ちゃん」
「おう」
闘志に燃えた強い瞳。
そんな目で見られちゃ勝つしかないって思うやん。
「位置について、よーいどん」
パンッ、と本番にしか使われないピストルの音。
しげは案外落ち着いていて、掛け声に合わせて足を動かすとどんどん加速していく。
…あれ、これ行けるんやない？
何度かした練習と、体感が全然違う。
風を切って走ってる感じがするし、何より前どころか横に並ぶ組もいない。
「行ける」
それはしげも思ったみたい。
掛け声の合間に、確信に満ちた声が聞こえて。
ゴールテープまであと少し。
早る気持ちを抑えてペースはそのまま。
「赤組が一着でゴールしました！」
アナウンスの声に、しげの俺の肩を抱く力が強くなる。
「っしゃ！神ちゃん！やったで！」
「痛…っ、なぁまだ紐はずしてへんて！」
しげが俺に向き合おうと体を捻るもんだから、俺の足首が変に曲がる。普通に痛い。
「あ、ごめん！」
慌てた様子で紐を外すと、今度こそ熱い抱擁。
からの、抱き上げ。
「ちょ、しげ…！」
「神ちゃんと一位、すっごく嬉しい！」
「ん、それは俺もやから、」
早よおろしてください。
意外と周りの視線が気になります。
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ナナセ(プロフ) - かこさん» いつもコメントありがとうございます！ ぜひ今作もお付き合いください〜◎ (2020年12月28日 18時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 今回のお話もさっそく大好きになりました。笑 応援してます(^^) (2020年12月28日 14時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2020年12月28日 12時
