#19 ページ19
少しだけ緊張した顔。
それでも学校という場所に嫌悪感はないらしく、藤井くんはなんでもないように振る舞ってみせた。
「じゃあ、入ろっか」
しげが朝練だったから、駅で藤井くんと待ち合わせた。
相変わらず制服は着崩しているし、髪の毛も明るいけど。
「お、神山おはよー…？」
「おはよう」
ドアを開けてすぐのところに座っていたクラスメイト。
俺の後ろを見て、驚いた顔をする。
「藤井くん。今日から教室来ることになってん」
「…よろしく」
「えらい男前な奴やな…背ぇも高いし」
「それはこいつと並んでるからやろ」
ぽん、と頭に温もり。
「っ、そのネタやめろって」
「んはは、おもろい奴やん。よろしくなぁ」
「おう」
俺を犠牲に早くも一人、話せるクラスメイトを得たらしい。
その様子を見ていたらしい男子がワラワラと寄ってきて、それを遠巻きに女子が見てる。
あー、藤井くんかっこいいから既にキラキラした目ぇ向けられてるわ…。
「ほな、俺先席に着いて…」
るね、と言う言葉を止めたのは俺のブレザーの裾を藤井くんが握ったから。
「……」
んー、人混み、好きやないねんけど。
こんなことされたら戻ろうにも戻れないわな。
・
チャイムの音が鳴って、藤井くんはやっと解放された。
転校生のように扱われたのは嬉しい誤算で、クラスにも早々に馴染めそう。
…で。
目下の俺の問題は。
「なぁ神ちゃんどこで知り合ったん！？あんなチャラい男！」
「ちゃら…！藤井くんは、髪の色は明るいけど別にチャラいわけじゃ…」
「はぁ！？あいつの肩持つん！？」
しげの機嫌が悪いこと。
「なぁなぁ、家どこら辺？」
…そして味方が誰一人居らんこと。
のんちゃんが珍しく人見知りすることなく藤井くんに接するから、俺は仏頂面のしげと一対一。
「しげも話してみたらわかるって。藤井くん、悪い人じゃない」
「……」
もー、埒あかん。
何がそんなに不満なんだか。
俺がこれ以上何も言わないのがわかったのか、しげが下唇を一層突き出す。
「なぁ、君」
何となく不穏な空気の中、藤井くんはしげに声をかけた。
「何？」
「ちょっと。」
しげにぐいと近づくと、そのままコソコソ話。
何を言われたかわからないけど、しげの凛とした眉が歪む。
「……これからよろしくな、藤井」
「望と同じように流星って呼んでくれてもええんやけど？」
余裕げな笑みをたたえた藤井くんに、しげはがっくりと項垂れた。
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ナナセ(プロフ) - かこさん» いつもコメントありがとうございます！ ぜひ今作もお付き合いください〜◎ (2020年12月28日 18時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 今回のお話もさっそく大好きになりました。笑 応援してます(^^) (2020年12月28日 14時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2020年12月28日 12時
