#16 ページ16
「しげ、起きて」
「ん''ー」
「もう…俺とのんちゃんで先に食堂行くで？」
「待って…今起きる、起きるから」
その後も未だうんうん唸ってるから、のんちゃんと共に席を立つ。
椅子を引いたときに鳴ったギィーって音で漸く彼は起き上がった。
「ちょ、ほんま待ってぇや！」
机の横にかけてるリュックから慌てて財布とスマホを取り出すと、さっきまで寝ていたとは思えない俊敏さで食堂へ駆け出す。
「何も走れなんて言ってないんやけど」
運動部のくせにこういう時に体力を使いたがらないのんちゃんは、俺と肩を並べながらしげのスタートダッシュを見送る。
「もう二人とも遅いねんけど！」
「しげが早過ぎんねん」
ほら小瀧の分、買っておいたでなんて言って、なんだかんだ優しい。
「気ぃきくやん！」
「その代わり」
「え？」
「今日のグラウンド整備、サッカー部が代わってくれへん？」
しげの申し出をのんちゃんは「嫌」とバッサリ。
そっか、二人とも実質上の部長か。(三年生はもう仮引退してるらしい)
「次サッカー部の時には俺たちが喜んでやりますから…何卒…」
「……」
「ほら、日替わりで一番人気のビビンバ、一口食べ？」
結局のんちゃんは、ビビンバ三口で折れた。
「あ、美味いやん」
「せやろぉ？」
自分が作ったわけやないのに得意げな顔。
のんちゃんから器を取り上げると、控えめに盛ったコチュジャンと絡めながらビビンバを食べ始める。
…いいな、美味しそう。
「そういえば、しげ聞いて？今日の授業の神ちゃんさぁ」
「へ、俺？」
何？わざわざしげに伝えることなんて…
「めっちゃ眠そうやのに一生懸命板書しとったから、何でそんな頑張るん？って聞いて」
…あ。
「のんちゃんすとっ、」
「そしたら“しげのため”って言うててめっちゃ可愛かったんやけど。お前マジで幼馴染、大切にしいや？」
食事中に物理的な妨害は厳しい。
縋るような願いも虚しく、のんちゃんはニヤニヤ顔。
「今更気づいたん？神ちゃんはいつも可愛えで」
な、にそれ。
今までそんな積極的なこと、言わんかったくせに。
「はい、あーん」
「あ、え？」
「ビビンバ、食べたかったんやろ？言えばええのに」
そういうところが可愛いの。
小さく笑ったしげに、頭がついていかなくて。
火曜日だけにしてくれないと心臓持たへんわ、と。
そんな感想を抱いたのは多分、照れ隠し。
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ナナセ(プロフ) - かこさん» いつもコメントありがとうございます！ ぜひ今作もお付き合いください〜◎ (2020年12月28日 18時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 今回のお話もさっそく大好きになりました。笑 応援してます(^^) (2020年12月28日 14時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2020年12月28日 12時
