#14 ページ14
「お疲れ」
「さんきゅ。ごめんな、最後まで待ってもらって」
「ううん、俺が見たかったから」
俺の言葉にしげがはにかむ。
照れんの？珍し。
「部室で着替えるけど来る？」
「いい、あそこめっちゃ汗臭いもん笑」
運動部の部室が軒を連ねる部室棟は、まぁ…うん、お世辞にも居心地が良いとは言えない。
皆の努力の結晶やっていうのはわかってんねんけどな。
「昇降口で待ってる」
「わかった。マッハで着替えてくる！」
駆けだす彼に焦らなくてええよ、と返すけど。
短距離のエース様にその言葉がきちんと届いたかは微妙なところ。笑
「もう、急ぎすぎやねんて」
出てきた彼のブレザーの襟を整えて、曲がったネクタイもただす。
「やってぇ…」
言い訳したがる尖った口に、睨みを効かせれば彼は弁明を諦めた。
「あ、折りたたみ持ってきた？」
「持ってへんけど…何で？」
「何でって…夜雨降るって」
聞いてませんの顔。
「しげのオカン何も言うてなかったん？」
「あー、うーん…」
今更彼に何を言っても傘が出てくるわけでもないし。
小さくため息をつくと、彼はしゅんとする。
「ごめんな、お詫びにちゃんと俺が持つから」
…いや、貸してもらえる前提かい。
・
案の定雨が降ってきた。
最寄り駅に着いて、ここから家までは15分くらい。
「神ちゃん、いつもありがとうなぁ」
調子の良い彼はヘラリと笑って、俺が取り出した降りたたみを手にする。
駅前の売店に寄る気配はゼロ。
「しげのほうが若干駅に近くて良かったな？」
たった数メートルやけど。
男子高生二人には狭すぎる紺の折りたたみをしげが広げる。
「ほんまに。幼馴染が神ちゃんで幸せや」
「んはは、感謝せぇよ」
軽口を叩くと、急に肩に回された彼の腕。
そのままぐっと引き寄せられる。
「な、に」
「何って、濡れてまうやろ？もっとこっち寄って」
俺の気も知らんで当たり前のようにそう言うしげ。
「わかったから、離して」
「やだ。何年居ると思ってるん？絶対手ぇ離した瞬間距離取るやろ」
「そんなこと…」
ある、けど。
「もう良いから大人しくしてなさい」
そう言って離してくれない彼の手と、触れた部分だけがひどく熱い。
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ナナセ(プロフ) - かこさん» いつもコメントありがとうございます！ ぜひ今作もお付き合いください〜◎ (2020年12月28日 18時) (
レス) id: 4f931bc539 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 今回のお話もさっそく大好きになりました。笑 応援してます(^^) (2020年12月28日 14時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2020年12月28日 12時
