初恋 ページ2
「兄さん、僕委員会呼ばれたから先帰ってて」
昇降口は春の陽気に溢れ、日差しが優しく僕らを照らしている。
心地いい暖かさの中で、兄さんは下駄箱にもたれかかり、デカい口を開けて欠伸をした。
「んえー…、折角待ってたのにお前もかよ〜」
「も?」
「カラ松と十四松は部活、トド松はバイト、一松は猫集会がどうたらーで先帰った」
待った意味ねーじゃん、と口を尖らせて文句を言う兄さん。
高校生になってまで兄弟と一緒に帰りたがるコイツの構ってちゃん精神が見え隠れする。
僕はそんな兄さんを他所に、わざとらしく委員会のファイルを脇に抱えた。
「じゃあ行くから」
「おーおーせいぜい頑張れー。チョロ松がクソ真面目にしてる間俺はナンパしてるもんねー。」
「真っ直ぐ帰れクソ長男!!」
兄さんにとっては何気ない煽りだろう一言が、僕の心に突き刺さる。
思わず罵倒、踵を返して昇降口から立ち去った。
不器用な僕は、意識をし出すといつも通りでいられない。
本当は顔を合わせるだけで精一杯。
さっきの話を思い出すだけで顔が火照ってゆくのが分かる。
誤魔化すように歩くスピードを早めた。
可笑しいね、兄弟なのに。
気持ち悪いね、僕は。
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作者名:あいにゃん | 作成日時:2017年3月6日 1時