58 : ひみつ ページ8
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何かあれば、彼と私に連絡をしてくれると言うので、今は家に帰り、冷静になるべきだと看護婦にも窘められる。
彼は納得していなかったが、病院に居ても何も変わらないと思ったのか、大人しく帰る事にした。
取り敢えず、彼の実家に寝泊まりさせて貰う事にして、コンビニで適当な食材を買ってお邪魔させて貰う。
私も彼にどんな言葉を掛けたら良いのか、どんな言葉を掛けれるのか考えていたが、何も思い浮かばなかった。
「 何か食べないと。 」
彼は、弱々しく首を横に振るだけ。
今、彼が何を考えているかは分からない。
でも、暫くの間、宮城県に滞在する事は不可能だった。
彼も大学やアルバイトがあるし、私も仕事や活動があるので、長く居られても明日迄。
もし、ご両親の身に異変が起きても、私達は直ぐに宮城県に帰っては来れない。
本当は彼の側に居たかったけれど、それも出来なかった。
『 11月20日( 水曜日 )』
事故から1週間後。
私達は宮城県に向かっていた。
今日の早朝、病院から連絡があったのだ。
彼の母親が亡くなったと言う連絡だった。
あれから、宮城県を後にして和歌山県に返って来たものの、彼が通常の生活を取り戻せる訳が無かった。
私も心配だった為、私の家でふたりで生活をしていたのだが、大学もアルバイトも休み、引き籠もりの様な生活を続けていた。
それでも、こう言う時間は彼の心を癒す為に必要な時間だと思ったので、私は何も言わずに見守った。
そして、等々、この日がやって来てしまったのだ。
こんなに若いのに、母の死を経験した彼を思うと、胸が張り裂ける思いだ。
病院に着くと1週間前の看護婦が案内してくれて、病室の中で白い布を掛けられ母親は眠っていた。
最近迄、容態は安定していたのだが、呼吸障害を引き起こして亡くなったと言う。
母親の担当医や看護婦や、多くの医療従事者がやって来ては色んな説明をするけれど、何も耳に入らなかった。
既に冷たくなっている母親の手を離さない彼は、涙を流す訳でも無く、現実なのか疑っている様子だった。
葬儀迄の段取りは全て、父親の兄であり、彼の伯父が色々と受け持ってくれる事になった。
交通事故に遭った日、彼が伯父に連絡をしていた為、伯父も覚悟をしていたのだろう。
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紗枝(プロフ) - 子羊さん» お早う御座います。子羊さん、ご無沙汰です😀コメント有難う御座います!皆様にパートナーシップ制度の理解が、浸透する事を願って書きました☺️今後の作品も楽しみにして頂けると、幸いです🫶 (1月24日 12時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
子羊(プロフ) - 秘密の恋人、完結おめでとうございます!パートナーシップ制度の事が詳しく知れて、とても面白くて勉強になる作品でした。次の作品も楽しみにしてます! (1月24日 2時) (レス) @page31 id: d689fcbe75 (このIDを非表示/違反報告)
紗枝(プロフ) - ゆず塩さん» こんばんわ。コメント有難う御座います!楽しんで頂けて幸いです🌟これからも是非、見守って頂けると幸いです😀 (1月23日 23時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず塩(プロフ) - 完結お疲れ様でした!最初から最後まで本当に考えることができる作品でした。素晴らしい作品をありがとうございました!他の作品も楽しみにしています!! (1月23日 23時) (レス) @page31 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
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