69 : ひみつ ページ19
'
本日、上司に話があると言っているので、時間を作ってくれた訳だが、退職届を握り締めながら、私の方が緊張していた。
「 お時間を作って頂いて、申し訳ありません。 」
「 それで、話って？ 」
「 退職させて頂きたいです。退職届を持って来ました。突然ですいません。 」
「 それは、どうして？仕事に不満が？ 」
「 いえ、私はこの仕事が大好きです。誇りに思っています。話すと長くなるのですが、簡潔に言うと、恋人と東京で同棲をする事になりました。それで、退職させて頂きたいんです。 」
「 東京で？和歌山が無理でも、近畿地方じゃ無理なのか？ 」
パートナーシップ制度の事を言いたかったが、話しても伝わらない方が怖くて、勇気が出なかった。
「 色々と話し合った結果、将来的には東京で暮らしたいって事になったんです。でも、急いでいる訳じゃなくて、恋人が先に東京で暮らすので、私が後から追います。だから、色々と引き継ぎを終えてから退職させて頂きたいです。 」
自分が、傷付かない選択肢を取る事も、ひとつの勇気が必要な事だ。
だから、私が彼の事を打ち明けられなったとしても、自分を情けないと責めるのは止めよう。
「 東京で再就職を？ 」
「 はい。出版社に就くかは分かりませんが、その予定です。 」
「 応援するよ。 」
上司はそう言って、私の退職届を受け取った。
さて、怯えながらも、震えながらも、戸惑いながらも、何とか毎日生きる事が出来ている。
それなら、別に過小評価する必要は無くて、自分を少し抱き締めてあげても良いのかもしれない。
また、ひとつ自分の人生の選択を選ぶ事が出来た。
この選択で、どんな風に人生が変わるのか気になって堪らない。
『 8月1日( 金曜日 )』
「 皆さんに、大事なお話があります。 」
夏がやって来た。
去年の夏も暑くて大変だったが、今年の夏は更に暑い気がする。
夏と言う単語を聞いただけで、汗が噴き出しそうになるのは、すっかり日本の夏を警戒しているからだ。
「 どうしたん、改まって。 」
「 すいません、トントンさん。皆さんに大事なお話があります。何度も申し訳ないです。 」
「 ええけど、何？ 」
「 実は、東京で暮らす事になりました。彼と、東京で同棲してパートナーシップ制度に登録する予定です。その為、此処を離れます。 」
′
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 53人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紗枝(プロフ) - 子羊さん» お早う御座います。子羊さん、ご無沙汰です😀コメント有難う御座います！皆様にパートナーシップ制度の理解が、浸透する事を願って書きました☺️今後の作品も楽しみにして頂けると、幸いです🫶 (1月24日 12時) (
レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
子羊(プロフ) - 秘密の恋人、完結おめでとうございます！パートナーシップ制度の事が詳しく知れて、とても面白くて勉強になる作品でした。次の作品も楽しみにしてます！ (1月24日 2時) (レス) @page31 id: d689fcbe75 (このIDを非表示/違反報告)
紗枝(プロフ) - ゆず塩さん» こんばんわ。コメント有難う御座います！楽しんで頂けて幸いです🌟これからも是非、見守って頂けると幸いです😀 (1月23日 23時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず塩(プロフ) - 完結お疲れ様でした！最初から最後まで本当に考えることができる作品でした。素晴らしい作品をありがとうございました！他の作品も楽しみにしています！！ (1月23日 23時) (レス) @page31 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
