65 : ひみつ ページ15
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「 何時も、貴女に救われる。有難う御座いました。 」
また、強くなれるのであれば、恐れずに挑戦してみよう。
どんな未来が待っているかは分からないけれど、彼と一緒なら、大丈夫。
きっと、大丈夫。
『 5月13日( 火曜日 )』
「 どうしたの?突然、帰って来るなんて言うから…… 」
母は、私と彼を見て目を丸くした。
そう、今日は私の両親に挨拶に来たのだ。
「 突然、ごめんなさい。彼と挨拶をしに。 」
「 初めまして。利川 Aです。突然、申し訳御座いません。 」
当たり前だが、母はとても驚いて、言葉をすっかり失っている。
何故、母に伝えなかったのかと言うと……特に理由は無い。
「 最初に言ってよ。何の準備もしてないのに。 」
「 ごめんなさい。でも、挨拶だけしようと思って。許して下さい。 」
「 ほら、入って。A君も、どうぞ。お父さん、翔吾が帰って来たわよ。 」
私は結局、彼の両親に挨拶は出来ていない。
墓参りには、ふたりで行った。
彼はもう、泣かなかった。
「 初めまして。利川 Aと申します。突然、申し訳御座いません。 」
「 ただいま、お父さん。挨拶をしに来たんです。長くいる訳では無いから。 」
父も随分と驚いている様子だったが、彼に「 翔吾の父親です 」と挨拶をした。
忙しなく動き回る母を横目に、私達はリビングに通され、完全な緊張状態の彼は石の様に固まっている。
「 それで、話って何? 」
「 実は、東京で同棲をしようと思っています。その、挨拶に。 」
次は両親がふたりで目を丸くした。
でも、直ぐに父は何時もの様子を取り戻して「 楽しそうだな 」と言う。
「 仕事は?どうするの? 」
「 辞めるよ。新しい仕事を、東京で探します。 」
「 折角、出版社に就職出来たのに? 」
「 それはそうだけど、未練はありません。 」
母は何か物言いたそうに口を噤んだが、直ぐに普段の様に取り繕い、「 翔吾が決めた事だから 」とまるで自分に言い聞かせる様に言った。
そして、父も同様に「 好きにしなさい 」と短い言葉だが最大の愛情が含まれている意志を表明してくれたので、私達は無事に両親に同棲を伝える事に成功したのである。
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紗枝(プロフ) - 子羊さん» お早う御座います。子羊さん、ご無沙汰です😀コメント有難う御座います!皆様にパートナーシップ制度の理解が、浸透する事を願って書きました☺️今後の作品も楽しみにして頂けると、幸いです🫶 (1月24日 12時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
子羊(プロフ) - 秘密の恋人、完結おめでとうございます!パートナーシップ制度の事が詳しく知れて、とても面白くて勉強になる作品でした。次の作品も楽しみにしてます! (1月24日 2時) (レス) @page31 id: d689fcbe75 (このIDを非表示/違反報告)
紗枝(プロフ) - ゆず塩さん» こんばんわ。コメント有難う御座います!楽しんで頂けて幸いです🌟これからも是非、見守って頂けると幸いです😀 (1月23日 23時) (レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず塩(プロフ) - 完結お疲れ様でした!最初から最後まで本当に考えることができる作品でした。素晴らしい作品をありがとうございました!他の作品も楽しみにしています!! (1月23日 23時) (レス) @page31 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
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