運命のトーナメント ページ21
.
未だ耳鳴りが続いている状態の僕がその場にしゃがみ込んでいれば、ふっと影が落ちる。見上げてみれば、大丈夫かぁと縁下が手を差し伸べてくれていた。
こう言う時に真っ先に助けに来てくれるのは決まって縁下である。西谷や田中は一笑いしてから腰を持ち上げるためいつも行動が遅いのだ。
縁下のその手に両手で縋り付く。彼はそのままグイッと僕の腕を掴んで引っ張って、勢いよく立ち上がらせてくれた。
もう本当に毎回毎回巻き込んでごめんなさいともうずっと同じ言葉を呪文のように繰り返している武田先生。未だ痛む頭を片手でトントンと軽く殴りながら、もういいですよと手を振った。
それより何か用があって急いでたんでしょう、と聞けば、あぁそうだったと彼は慌てて体育館の中に入ってきた。
先生が閉め忘れた開きっぱなしの体育館の扉を閉めてやる。
やっぱ、いつもどこか抜けてる人だ。そんな呆れを含んだ笑いも、次の武田先生の言葉ですっこんだ。
武田「でました!!インターハイ予選の組み合わせ!!」
「「!!!」」
ドタドタとみんなの元へ小走りに走り寄る武田先生に視線が集中した。僕も隣にいる縁下と視線を合わせてから、ゆったりと歩いて先生の後をついていく。
武田「これです!!」
田中「……ッエ!?」
菅原「オイオイ……。」
みんなに囲まれた武田先生は、勿体ぶることもせず早速周りのみんなにトーナメント表を公開したらしい。みんなは烏野の名前を見つけたのか、数秒経ってから辺りの空気がどよめいた。
なんだか菅原先輩の反応的に嫌な予感しかしないが。もう本当に嫌な予感しかしないが、まだこの目で確認するまではわからない。
集団にたどり着いて、空いているところから背伸びをして中心の武田先生の手元を覗き込む。しかしやはり周りの奴らが背が高く僕の身長では無理があるのか、あまりはっきりと見えない。
地面にかかとをつけてどうしようかと一つ息をつけば、集団の中から伸びてきた手に腕を掴まれそのまま内側に引き摺り込まれた。
月島「はい、見えますかー?」
どうやら内側から僕を引き摺り込んだのは月島だったらしい。意外な正体にびっくりしていれば、さらに彼は僕を自分の前に立たせて僕にそう声をかけた。
言葉だけ聞けば優しさなのかもしれないと思うだろう。しかし現在の僕は彼に頭を肘置きにされている。これは低身長イジりでしかないのだ。
おまけにニヤニヤと笑っているのだから、確信犯である。
.
2438人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨智よゐ(プロフ) - 由香さん» 応援ありがとうございます!こちらこそ、このような駄作をいつも呼んでくださりありがとうございます…。なかなか更新ができずご迷惑おかけしております、大変申し訳ございません…。これからも作品の方をご愛読してくだされば嬉しいです! (6月25日 16時) (レス) id: 6395fe5fe1 (このIDを非表示/違反報告)
由香(プロフ) - 忙しい中での更新ありがとうございます!体調など無理せずご自身のペースで頑張ってください!いつも楽しいお話ありがとうございます!これからも応援してます!! (6月20日 22時) (レス) @page50 id: b1fe3ea9c5 (このIDを非表示/違反報告)
雨智よゐ(プロフ) - 玄狐さん» ということは3週目…!?読み返してくださりありがとうございます!これからも新しく筆を進めていこうと思いますので、応援よろしくお願いします! (6月18日 22時) (レス) id: 6395fe5fe1 (このIDを非表示/違反報告)
玄狐 - 久しぶりにまた読みましたが、一周目と二周目に劣らず面白いです!これからも更新頑張ってください!応援してます!! (6月17日 17時) (レス) id: bd7e9ab3a9 (このIDを非表示/違反報告)
雨智よゐ(プロフ) - 玲さん» 6周目……????(宇宙猫) こんなに長くてダラダラしたお話をそんなに読み込んでくださるなんて……なんという幸せ……???お忙しい中お時間頂いております、いつもありがとうございます……。これからは更新頑張りますので、ご愛読くだされば嬉しい限りです!!!! (6月11日 23時) (レス) id: 6395fe5fe1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雨智よゐ | 作成日時:2022年10月2日 0時