一歩進んで二歩下がる ページ36
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そう話していれば、頬に赤々と紅葉マークをつけた西谷がニコニコと満足そうに笑いながら帰ってきた。彼はその笑顔のまま、首を少し傾げて僕たちに質問する。
西谷「で、旭さんは戻ってますか?」
その質問に、全員が口を閉じた。視界の端では知らない名前が出てきて困惑している日向と影山。
次の瞬間には激怒するであろう西谷に備えて、一歩後ずさった。
澤村先輩がゆっくり首を振って小さく「いや」と声を出す。すると予想通り、西谷はわなわなと握った拳を震わせ始めた。
西谷「…ッあの根性なし…!!」
田中「こらノヤ!!エースをそんな風にいうんじゃねぇ!!」
西谷「うるせぇ!!根性なしは根性なしだ!!前にも言った通り、旭さんが戻んないなら俺も戻んねぇ!!」
そう叫んだ西谷はこちらに背を向けて体育館から出て行こうとする。
その後ろ姿を黙って見送る気になんかなれなくて、気がついた時には無意識に彼の手を掴んで引き止めていた。
西谷「…んだよ。」
貴「……。」
いつもとは違う冷たく突き放すような声色に、少しだけ肩が跳ねる。
怯んでそのまま手を離しそうになったが、離さないぞという気持ちを込めて手にグッと力を入れた。
貴「…このチームは、レシーブがあまり強くないんだ。西谷の力が必要なんだよ。」
西谷「何度も言ってるだろ、旭さんが戻ってこないなら俺も戻らない。それたけだ。」
貴「っ…東峰先輩だって、きっとすぐに戻って」
西谷「うるせえ!!」
しかし僕の手は振り解かれた。僕よりも西谷の力の方が圧倒的に強いのはとうに昔から知っている。
振り解かれた手は行く宛てがなくなり、弱々しく宙を舞った。そのまま西谷はくるりと踵を返し、開いていた体育館の扉をピシャリと閉めてどこかへ行ってしまう。
僕を烏野高校のバレー部に誘ったのはお前だろ。
怒りで拳が震え、そんな不満がポロリと口から溢れた。
すると僕の手が優しく包まれる。驚いて顔を上げれば、すぐそばに影山の顔があった。
影山「爪、手に食い込んでます。何があったかよくわかんないんスけど、大丈夫です。西谷さんも…その、旭さん?って人も、きっと戻ってきます。」
今はただその一言に、頷くしかなかった。
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雨智よゐ(プロフ) - ゆきさん» ゆきさんこそ、こんなご時世ですのでお体にお気をつけてお過ごしください!お気遣いありがとうございます! (2022年6月14日 22時) (レス) id: 6395fe5fe1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 雨智よゐさん» 頑張ってください…!ただ、頑張りすぎて体調崩したりしないように頑張ってください(?) (2022年6月14日 6時) (レス) id: ef64ea2517 (このIDを非表示/違反報告)
雨智よゐ(プロフ) - ゆきさん» 暖かい応援コメントありがとうございます…!!これからも皆様のもとに面白さが届けれるよう頑張ります…。続編もよろしくお願いします! (2022年6月14日 6時) (レス) id: 6395fe5fe1 (このIDを非表示/違反報告)
雨智よゐ(プロフ) - 玲さん» ありがとうございます〜!🎉こんなに長々と書いてしまっている作品を未だ読み続けてくださりありがとうございます…。玲さんこそ!体調にはお気をつけてお過ごしください! (2022年6月14日 6時) (レス) @page49 id: 6395fe5fe1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも楽しみにしています!更新頑張ってください!! (2022年6月14日 5時) (レス) @page50 id: ef64ea2517 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨智よゐ | 作成日時:2022年4月23日 0時