はじめまして、相棒 ページ49
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全くわからないとは言ったものの、何か引っかかるものがあった。あと一押しで何かを思い出せそうな気もする。
しかしこう言う肝心な時に思い出せない僕の頭はなかなかイカれてきてしまったらしい。慣れない初対面の人とのコミュニケーションにどうしようかと頭を回すだけで精一杯だった。
名前を名乗るだけ名乗って、またしばしの沈黙に包まれる体育館倉庫。気まずすぎるが、出入り口という退路を立たれているため逃げ出すこともできない。
ここが生き地獄……とパニックになる脳内で考え、もはや追いつけないほど思考が加速して行った時。目の前の彼はまた徐に口を開いた。
その彼の言葉は、僕の思考を停止させるのには十分すぎた。
孤爪「おれ…中二の頃からあるオンラインゲームをやってて、その時のハンドルネームが、コヅケン、って言うんだけど。」
___聞き覚えがあった。なんだか思い出せなくてムカムカしていたものが、一瞬のうちに脳内に溢れかえる。
これでもか、というほど目を見開いたのが自分でもわかった。っは、と、口からは声なんて出なくて、かろうじて一瞬空気が通り抜ける。息を呑む、とはまさにこのことだった。
そんなまさか、なんて考えが、冷えていた脳内を一瞬で溶かす。思いっきり思考が停止して呼吸の仕方すら忘れてしまったが、彼の言葉は理解ができた。
孤爪「その一年後にハンドルネーム変えて、い、今はプリン、って名前で、相棒とクエストとか行ってる、んだけど。……なんか、その………身に覚え、とか……。」
ありませんか、と尻すぼみに、最後は聞き取ることすら困難と思えるようなボリュームで言葉を紡いだ彼。
予想が確信となる。
薄暗いモノクロの体育館倉庫だったはずなのに、今は得点板の緑やマットの青色、バトミントンのラケットの赤などが、えらく鮮明に映った。
今思えば彼は、髪色はプリンカラー、同学年でバレー部、そんでGW合宿。すべての項目に丸がつく。声だって同じだ。合宿所は電波が悪くところどころ音質が悪かったので、声が昨日聞いたものと同じことに今ようやく気がついた。
貴「知ってる。」
孤爪「……え、」
貴「君のこと、知ってる。いつもクエスト一緒に行って、昨日も電話して、」
僅かに口角が上がるのを感じる。あまりの衝撃に先程の孤爪と同じように唇が震え、声もなんだか情けない。
しかし僕の言葉を聞いた瞬間、目の前の彼は泣きそうに笑うのだ。
はじめまして、相棒。と。
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雨智よゐ(プロフ) - あままさん» 返信大変遅れてしまい申し訳ありません。支援絵のみの作品を作成してもいいのですが、分けてしまうとそちらのページをわざわざ開かなくてはいけないという一手間が増えてしまいます。せっかくいただいた支援絵は読者の皆様に見せびらかしたいのが本音です!!!(全力) (2023年3月30日 19時) (レス) id: 6395fe5fe1 (このIDを非表示/違反報告)
あまま(プロフ) - 頑張ってください応援してます!あと、思ったのですが支援絵と本編別の投稿にはしないのですか? (2022年11月18日 21時) (レス) @page16 id: 4346a5f7c3 (このIDを非表示/違反報告)
雨智よゐ(プロフ) - らっこ星人さん» わかりにくくて申し訳ありません…最後のページに記載している通り、パスワードは114514となっております!続編もよろしくお願いします! (2022年10月2日 18時) (レス) @page50 id: 6395fe5fe1 (このIDを非表示/違反報告)
らっこ星人(プロフ) - すみません、続編を読みたいとですがパスワードがわからないです。もしよろしければパスワードを教えていただきたいです。 (2022年10月2日 7時) (レス) id: 60908efb0f (このIDを非表示/違反報告)
雨智よゐ(プロフ) - ただのバカですさん» 実際自分に小説更新を続けている意識があまりなく、漫画を読み返しているような気分で文字を綴っていますので、飽きる飽きないというのはあまり考えたことがありませんでした…。続編でもよろしくお願いします!! (2022年9月27日 8時) (レス) id: 6395fe5fe1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨智よゐ | 作成日時:2022年8月14日 8時