〜とある夢境〜 ページ3
〜Aside〜
ーーはらはらと桜が舞う。よく歩いた桜並木の道、その真中に三人の見知った背中があった。
三人は、仲良さげに笑い合いながら話をして歩いている。嗚呼、そこに居たのか。待って、今、私も行くから。また、一緒に話したかったんだ。
そう思い、慌てて三人の背中を追うように私は走り出す。走るたびに、桜の花弁が横をすり抜けて地面へと落ちていくのが見える。けど、そんな事を気にしている場合じゃない。
早く、早く行かないと。もしかしたら、また私だけ置いて行かれてしまうかもしれない。ずっとずっと、話したかったんだ。頑張ったんだよ私。
キミたちが私を置いて行ったあと、頑張って色々な事件を解決したんだ。⋯⋯キミたちを傷付けた犯人も捕まえた。だから、お願い。これだけ頑張ったんだから、少しくらい褒めてよ⋯⋯。
貴「ッ律、伊織、千暁⋯⋯!!」
もうすぐ、もうすぐなんだ。もうすぐで手が届きそうな距離になる、私は思いきり手を三人へと伸ばした。すると、三人が笑いながら私の方へ顔を向ける。
久し振りに見るその顔は、前に会った時と全く変わりはない。いつもの優しい笑顔を浮かべていた。
けれど、その瞬間。何故だが、私は走っていた足を止めてしまう。ーーだって、前にいる三人は笑っているのにどこか寂しげな表情をしている。
貴「律、伊織、千暁⋯⋯。どうしたの?漸く会えたのに、何でそんな顔してるの」
そう、私が三人に問う。すると、三人はゆっくりとこちらへと腕を伸ばしてくる。そのまま、ふわりと私の頭を三人が撫でた。
律「⋯⋯すまない、A」
伊「悪ぃな、けどお前はまだダメだ」
千「ごめんね、Aちゃん。伊織の言う通り、まだこっちには来ちゃ駄目だよ?まだ、キミが来るには早すぎる」
そう、言われ私は目を見張る。⋯⋯どうして?何で、そんなことを言うの?いつだって、私たちは四人で居たのに。
貴「どう、して⋯⋯?私は、また四人で居たいだけなんだ。また、いつもみたいにどうでも良いことで笑って話して、一緒に居て欲しいだけなんだよ⋯⋯」
ーーなのに、どうして私だけ突き放そうとするの?
すると、ふわりと暖かな体温が体を覆った。原因は、三人が私を抱きしめているからだろう。
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作者名:千本桜 | 作成日時:2022年5月17日 22時