case 40 ページ40
遅いな…
今日、私の家に来る約束をしていたのに。
もう時計の針は22時を指している。
3時間前ー
“遅くなるかも”
そんな短いメッセージがあったきりで、その後何の連絡もない。
単独ツアーまで後一カ月を切った。
振付やら全体の構成をメンバー自身が考えているから、今日は朝からパフォーマーだけでスタジオにこもっていたのは知っている。
今日はもう無理だろうな…
そう思いながらも
“もういいよ”って言葉を、どう表現したらさりげなく伝わるのかが分からなくて
最近自分の気持ちが重すぎて、メールの内容を考え過ぎてしまう。
玲於から連絡がきたのは、日付も変わろうとする時間
“遅くなってごめん。今日行けそうにない”
“大丈夫？あんまり無理しないように頑張ってね”
ホントは会いたかった。
会えないと不安ばっか募っていって、会って玲於の気持ちを確かめたくなるのに
私はそう返信するのに精一杯だった。
・
ーライブ当日
ツアーが始まり、地方を周っている玲於は東京にいる日も少なくなって一ヶ月近くゆっくり会う時間もなくて事務所で顔を見る日も少なくなった。
“楽しみにしてて”
昨日の夜、玲於から短いメールが届く。
「すごい、触れそうなぐらい近いね！」
会場に入り、一番前の席に向かう。
希美がファンの雰囲気とかにも押されて、どんどんテンションが上がっていく。
ホントに近い…
玲於からも私の表情まで確認出来そうだ。
キャーーーーーーーーッ
音楽が始まるとファンの声援が会場中に響きわたる。
ステージにいる玲於は
2人でいる時の甘えたの玲於じゃなくて
力強く踊る玲於は
かっこよくて、眩しくて…
知らない人みたいだ。
「Aの彼氏、大人気だね」
玲於の時に声援が一段と大きくなるのを聞いて、希美がこそっと耳打ちしてくる。
私の…か。
玲於を呼ぶファンの人たちの声援が
私だけの玲於じゃないって、言っているみたいだ…
「A、大丈夫？」
希美が心配そうな顔で私を見ていて
気づいたら私は泣いていて
今まで我慢してたモノが一気に爆発したみたいに
涙が溢れて止まらなくなった。
驚いている玲於と一瞬目があった気がしたけど
それも、涙で霞んでしまう。
遠いよ…玲於
一番前の席にいるのに
すごく遠く感じて
やっぱり、世界の違う人だったんだ…
私はもう
玲於の隣にいる自分が、全く想像出来なくなっていた。
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あず(プロフ) - 愛利さん» そんなに感動して頂けるなんて…書いて良かったです！ありがとうございます！！ (2016年10月20日 19時) (
レス) id: 9b3d990a2d (このIDを非表示/違反報告)
愛利 - 一気読みしちゃいました！最後のところ感動しすぎちゃって枕ビチャビチャです（笑) (2016年10月18日 19時) (レス) id: 183501c55e (このIDを非表示/違反報告)
あず(プロフ) - ｍｉｌｋさん» 感想嬉しいです！最後まで読んで頂いてありがとうございました！！ (2016年5月9日 8時) (レス) id: a67bb7e532 (このIDを非表示/違反報告)
ｍｉｌｋ - めっちゃ感動しました！！面白かったです！ (2016年5月8日 22時) (レス) id: 62df234d60 (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - ぴーなっつさん» イメージと合っていて良かったです！感想嬉しかったです☆ありがとうございます！ (2016年3月28日 19時) (レス) id: 7ee4db9f7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あず
| 作成日時：2015年4月25日 8時
