case 1 ページ1
「髪切ったんですね。
すげー似合ってます」
少し息を切らしながら
そう言ってはにかんだ笑顔を見せてくれたのは
うちの事務所の所属タレントの、佐野玲於くん。
昨日、胸の下まであった長い髪をバッサリ切って
ショートカットにした。
私はLDHの受付の仕事をしていて
入り口を入ってすぐの所にいつもいる。
玲於くんは走ってきたのか、額にうっすら汗を浮かべて
私の変化にすぐに気づいて話しかけてきてくれた。
『ありがとう』
「ちょっと今日、俺時間ギリギリなんで…」
私のお礼と被せるぐらいの勢いでそれだけ言って、足早に階段を上って行く。
今日はGENERATIONSだけのミーティングで
会議室の予約が入っていたなあと思いながら
「かわいいよね〜。玲於くん」
そんな様子を見てた希美がからかうように話しかけてくる。
水川希美は私と同じ受付で、
同期入社ってのもあって何でも話せる親友だ。
『急いでるのに、それだけでも言ってくれるって
なんか嬉しいね』
「懐いてるよね。Aに」
玲於くんは受付の前を通る度、何かと話しかけてくれる。
キラキラした瞳や笑顔に、いつも癒される。
「Aの事。好きなんじゃないの？」
『まさかー』
そんな訳ない。
向こうは私よりも5歳も年下で、ましてや芸能人。
私なんて相手にされる訳がない。
「って、Aは今それどころじゃないか…」
『うん。雄哉がなかなか別れてくれなくて…
もうどうしていいか分からない』
私は深いため息をつく。
雄哉は5年間付き合った彼氏で
つい最近私の方から別れを切り出した。
付き合ってる間何度か浮気され、その度別れたり戻ったりの繰り返しで
弱くて寂しがりやで自分勝手な雄哉を、情もあってスッパリ切る事ができなくて
気づけば5年。
けど、今回私の親友と関係を持った事を知って…
さすがにもう無理だと思った。
雄哉はどうせ許してくれると思ってる。
私も、もう無理と思いながら
結局許してしまいそうな自分がどっかにいる。
「また許すつもり？」
『…もう、それだけは避けたい』
家にある雄哉の私物も全て送り返して
家の鍵も変えた。
ケジメをつける為にも
髪まで切ってスッキリしたんだから。
私は自分の決意を確かめるように
キュっと唇を噛んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 375人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「GENERATIONS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あず(プロフ) - 愛利さん» そんなに感動して頂けるなんて…書いて良かったです！ありがとうございます！！ (2016年10月20日 19時) (
レス) id: 9b3d990a2d (このIDを非表示/違反報告)
愛利 - 一気読みしちゃいました！最後のところ感動しすぎちゃって枕ビチャビチャです（笑) (2016年10月18日 19時) (レス) id: 183501c55e (このIDを非表示/違反報告)
あず(プロフ) - ｍｉｌｋさん» 感想嬉しいです！最後まで読んで頂いてありがとうございました！！ (2016年5月9日 8時) (レス) id: a67bb7e532 (このIDを非表示/違反報告)
ｍｉｌｋ - めっちゃ感動しました！！面白かったです！ (2016年5月8日 22時) (レス) id: 62df234d60 (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - ぴーなっつさん» イメージと合っていて良かったです！感想嬉しかったです☆ありがとうございます！ (2016年3月28日 19時) (レス) id: 7ee4db9f7e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あず
| 作成日時：2015年4月25日 8時
