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★ ー YOU side ー ページ8

ー A side ー


「別れた…」


ずっと片思いをしていた人が、今目の前で一生言う訳ないと思っていた台詞をはいた。

聞き間違いかと、一瞬耳を疑ってしまう。



『別れた、って…?』

「彼女と」


ドクンドクンと、心臓の音が大きくなる。



『嘘でしょ?』

「振られた…」


まだ開店して間もない時間。

お店に入って来た時から、お酒の匂いを纏っていた亜嵐。


いつもと様子が違うのは、すぐに分かった。


焦点の定まらない目でグラスを見つめては、すぐに喉に流し込む。


何も望まない。

友達として側にいれたら良かった。


それでも、心のどこかで願っていた事。


でも今亜嵐の辛そうな姿を見て、少しでも望んだ想いに罪悪感で胸がいっぱいになる。




「帰りたくね…」


彼女の面影があり過ぎる部屋。

一人になりたくない、考えたくないって
お酒の入ったグラスはすぐに空になっていく。


亜嵐にとって、彼女がどんなに特別かって事

いつも痛いほど感じて、私の胸を突き刺していた。



「どうしたら良かったんだよ…」



目の前で好きな人が苦しんでるのに、気の利いた言葉さえ出てこない。



こんな時


何て言葉をかけたら、楽になる?


ねえ、私に何が出来るの?














『飲み過ぎ』

「んー」


結局今の私に出来る事は、亜嵐の気がすむまで付き合う事ぐらい。


傷ついても、何も出来なくても

それでも側にいたい。


例え、後から虚しさが襲ってきても…





『すみません、ありがとうございます』


バイト終わり、酔い潰れた亜嵐をマスターがタクシーまで運んでくれる。


「一人で大丈夫?」と心配するマスターにもう一度お礼を言って、一緒にタクシーに乗り込もうとした時




「どうしたの?」


よく知っている声に振り返ると、玲於くんがそこに立っていた。




『亜嵐が、酔い潰れちゃって…』


「…俺も行く」


玲於くんの視線が、亜嵐、私と移動して

後部座席の亜嵐の隣に乗り込もうとした私を助手席に促すまで、一瞬の流れだった。



年下のくせに生意気だけど

いざという時頼れる人


そして、唯一

私の亜嵐への想いに気付いた人…。


だから今も…


自分の汚くて醜い感情全てを見透かされている気がして…

玲於くんの顔が見れなかった。

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りさ - 続き待ってます(*^-^*) (2021年2月1日 2時) (レス) id: 23700234a2 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 続き待ってます(*^-^*) (2021年1月25日 1時) (レス) id: ad058fd0f4 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 続き待ってます(*^-^*) (2021年1月22日 0時) (レス) id: ee645294a7 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - あずさん» いえいえ(*^-^*)そうなんですね(*^-^*)頑張って下さい(*^-^*) (2021年1月19日 0時) (レス) id: ee645294a7 (このIDを非表示/違反報告)
あず(プロフ) - りささん» コメントありがとうございます!せめて全員描きたい…頑張ります(*^^*) (2021年1月18日 20時) (レス) id: 26814e9a22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あず | 作成日時:2018年7月6日 1時

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