GENEと恋うた２～SOUND OF LOVE～ (ページ33)

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バチバチと、窓を打ち付ける雨の音

ゆっくりと瞼を開く。

また、この夢…

Aとの、最後の日の夢

ーおはよ、亜嵐

耳に残る、毎朝聞いていた心地よい声

雨の音が全てを消していく…

シーツをまさぐっても

もうAの温もりは何処にもない。

このベッドも、この部屋も

何もかも、一人じゃ広すぎるよ…。

まだ消えない涙の跡に

新しい滴が、頬をつたう。

時が忘れさせてくれるなんて

誰が言っただろう。

胸を締め付けるこの想いは、日に日に大きくなっていって

こんなにも

まだ、好きなのに…

別れたあの日
部屋に帰るとAの痕跡は綺麗に消えていた。

まるで初めから居なかったかのように…

ただ一つ。

ベットサイドにある、真っ赤なブレスレット

これだけがAがここに居た事を証明するように

色が消えたこの部屋で、唯一それだけが色を放つ。

二連の赤い、レザーブレスレット。

捨てて下さいって、意味なんだろうか…

それでも、いつかAが取りに来るような気がして

動かす事も、捨てる事も出来ないまま。

Aの手首に巻かれた赤いブレスレット越しに

Aの嬉しそうな笑顔。

鮮やかな赤が、記憶の扉を叩く──

.

─「付き合って…もらえましゅか？」

ずっと好きで

何回目かのデートで、勇気を出して告白した日。

『そこ、噛む？』

緊張でガチガチの俺を見て、しかも敬語って
Aがぷっと吹き出す。

「だって…こんなの慣れてねえんだもん」

恥ずかしくて、大げさに拗ねてみたり。

そんな俺を見てAはまた笑って
俺の強ばっていた頬も、自然とほぐれていく。

『ちゃんと言って？』

「ちゃんと？」

『うん、同じ気持ちだから…ちゃんと聞きたい』

本当、敵わないな。

その眼差しが、その言葉が

Aの全てが…俺を安心させてくれる。

だから俺は、この言葉を伝えなきゃって思うんだ…。

「好きです…俺と、付き合って下さい」

『ふふ、言わせちゃった』

「言わされた」

Aのいたずらな笑顔に、俺も笑顔で返す。

心臓の音が、身体中に響いてくる。

目の前に差し出される、Aの小さな手。

あっ、て

慌てて、汗が滲む自分の手を服に擦りつけて

ぎごちなく指が触れた瞬間…

きゅっと、心も捕まれた気がした。