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ある日、街で彼を見かけた。
かつて彼が思いを寄せた人と一緒だった。




聞きたくないはずなのに、
優しい顔であの子に言葉を紡ぐ彼から目が離せなかった。





「あのさ、俺、ずっと言いたいことあってさ、
俺さ、ずっと好きだったんだ。
物心ついた頃から、ずっと。」




この言葉を聞いて、その場から逃げるように立ち去った。






わたしがずっと聞きたかった太志くんからの好きという言葉を
あの子はあんな簡単にもらえてしまうんだ。

わたしがどんなに思っても向けてもらえない感情を
あの子は他の人を思っているのにもらえるんだ。



太志くんだって
言うつもりはないって、言っていたのに
こんなに時が経ってもあの子が好きで
わたしと過ごした時間なんてなかったみたいに


心の穴を埋めた気になっていたけど
太志くんの心の中にはずっとあの子がいたんだ。




わかっていたことなのに、
真っ黒な感情が自分の心の中を埋め尽くして、消えてくれない。






「Aちゃん!!」



『っ、、太志くん、、、どうしたの?』




「いや、Aちゃんが歩いてるの見えたから追いかけてきちゃった」



いつもなら嬉しい言葉も今はもうダメで。

わたしはずっと見てたよ、
でもあなたはずっとあの子を見てたでしょ
あの子と話が終わったからわたしを見つけたわけで
あなたの1番はあの子で
あの子がいる限りあなたの目にわたしは映らない。




真っ黒な感情が心から溢れ出そうになって
必死に言葉を抑えたのに
溢れ出てしまった感情は涙になってこぼれ落ちていった。


「Aちゃんっ?どうしたの、大丈夫?」


『大丈夫だから、放っておいて』


「でも、泣いてるから」


『わたしは大丈夫だから
それよりよかったね、好きって伝えられて
ずっと思ってたんだもんね』


「えっ、Aちゃん聞いてたの?」


『ごめんね?聞こえちゃった
嬉しかったと思うよ、太志くんにずっと思われてたなんて』


「ちが、Aちゃん、聞いて?」


『わたしね?ずっと、ずっとね?

太志くんのこと好きだったんだ。』


初めて太志くんに伝えた"好き"は
大切にしてきたはずなのに、とても雑にこの世界に放たれて
心から無理やり押し出され過去形になって汚い感情に混じっていった。





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美桜 - あむ…さん» そうなんですか!? いつか読める日を心待ちにしています まだまだ寒いのでお体に気をつけて更新頑張ってください! 応援してます (1月5日 0時) (レス) id: a3587cf79e (このIDを非表示/違反報告)
あむ…(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、コメントありがとうございます。どの作品かな?って思っていたので追いコメントありがたいです。アイビーが美桜様の心に届いたようで嬉しいです。アイビーの未来のお話は少し考えているところもあるので、いつかお届けできたらと思ってます。 (1月4日 23時) (レス) id: c3ed15d929 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 下のコメント「アイビー」のことです こいつ何の話してんだってなりましたよね すいません (1月4日 22時) (レス) @page14 id: a3587cf79e (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - いいお話過ぎて感動しました…泣 長編で過去とかそれからの2人がどうなったのかも見てみたいな・・・なんて思ったりして1人で悶えてます これからも応援してます! (1月4日 22時) (レス) @page12 id: a3587cf79e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あむ... | 作成日時:2024年1月1日 22時

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