Actress06 ページ7
い「いきなりすみません。私の劇団は今旗揚げ公演中で次が秋組なんですが、
あ！さっき助けて頂いた二名が所属してます。
私もまだまだ指導者としては不足な部分もありまして、
少しでも的確に、アドバイス、サポートなどしていただける人材を探していました。
本当にいきなりなんですが、お願いできないかと。」
「それは要するに指導をするだけで、私が表舞台に立つことは無いということでよろしいですか？」
い「先ほどの会話で少し察したつもりだったのですが、何か事情があるんですよね？
私がお願いしたいのはあくまでも指導です！表舞台に立つ必要はございません。
それにうちの劇団には寮がありますので、寮に入って頂いても構いません！」
「とても魅力的なお話ですが、なぜ私なんですか？」
実際、私にとってはすごく魅力的な話だ。
日本に帰ってきたばかりで住むところも探していた。
寮生活が出来るとなると今から住むところを探さなくてもいい。
でもこんなにもおいしい話があっていいのか？
もちろんこの女性、いづみさんを疑ってるわけじゃないけど、表舞台にたたない人間に執着する必要があるの？
い「私、日下部Aさんの大ファンだったんです。ずっと見ていました。私はあなたの演技が大好きなんです。
表舞台に立たないということはとても悲しい気持ちでいっぱいです。
でも指導者としてなら、表舞台にたたなくても演技に関わる日下部さんを見ることができるって、思って、
まぁ私のわがままなんですけど、日下部さんには演技の世界に関わり続けてほしいな、どんな形でも。っていうのが本音です。もし少しでも希望があるのなら、うちの劇団を使って頂けないかな、と」
いづみさんの言葉がすごく胸に突き刺さる。
本場NYで格の違いを見せつけられて、落ちこぼれ扱い。
一時期は演技が大嫌いになったこともある。
親はそんな私を心配して、1人帰国させることを決断。
私はのこのこ日本に帰ってきたけど、やっぱりもう怖さが勝つ。
そんな落ちこぼれの私にこの人は、救いの手を差し伸べてくれる。
「私はもう役者はやめました。そんな私でも必要としていただけますか？」
い「はい、もちろんです！」
私はその手を掴んでみようと思う。
「では、宜しくお願いします。いづみさん」
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作者名：姫里 | 作成日時：2017年5月28日 21時
