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宮脇「明日、糸巻さんにお願いしよう。」
ふーっと長い溜息をついて、資料を閉じる。
コツコツコツと足音がして、バッと九十九が振り返る。
岡田「まだ、起きてたのか。」
宮脇「九重さん、すみません。
起こしちゃいましたか？」
岡田「いや、単に眠れなくて...。」
宮脇「そうですか。私も同じですよ？」
九重はすたすたと九十九の方に歩いていき、
隣の椅子を引いてそこに腰かけた。
岡田「ごめん、嘘。」
宮脇「え？」
岡田「......い、だった。」
宮脇「え、あの、なんて...？」
岡田「...っだから！心配だったんだ！」
宮脇「え？」
岡田「今日小倉と会って、話して、
......落ち込んでいるんじゃないかと思った。
以前からの知り合いが、犯罪者になるなんて。
ましてや自分が警察官なのに。
俺なら、ショックだから。」
宮脇「俺...。」
岡田「え？」
宮脇「九重さんが俺って言うの、珍しいですね。」
岡田「いや、そういうことじゃなくて。」
宮脇「私、自分でも驚いちゃうくらい全然ショックじゃないんです。
そりゃあ、同じ道場で一緒に練習してきたし、一応兄弟子だし、
仲良かったはずなのに...。
ああ、やっぱりって思っちゃったんです。」
岡田「やっぱり？」
宮脇「やっぱり、みんな私を置いて行っちゃうんだなって。
物理的にも、精神的にも。
大人になっても、裏切られるんだなぁって。」
岡田「大人になっても...？」
宮脇「あれ、なんでこんな話九重さんに…。
ごめんなさい、今の忘れてください。
じゃあ、私今のうちに休んじゃいますね。
九重さんも早めに休んでくださいね、お疲れ様です。」
九十九は九重にうんともすんとも言わせないように、
矢継ぎ早にまくし立てて席を立ち、部屋を出ようとする。
岡田「俺は、置いていかない。」
宮脇「...え？」
後ろから聞こえてきた声に、反射的に振り返る。
岡田「俺は、九十九のバディだから。
何があっても、絶対、置いていかないから。だから...。」
宮脇「…っあはは。噓でも嬉しいです。
ありがとうございます、九重さん。」
そう言って、また九十九は歩き始めた。
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作者名：杏奈 | 作成日時：2022年5月28日 13時
