花火【綱海条介】 (ページ14)

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モウケモノページ14

「私はサッカーに憧れていました。自分に出来ない事に、無いものねだりですね。時々、ベッドから抜け出して筋トレしたり、他の患者さんにボールを借りたりしてました。どうやら素質があったみたいで上達は早かったです」

彼女が点滴を着けたままリフティングする姿を思い浮かべ、俺は顔をしかめた。

「けど、この時点で回復の兆しがないということは、このまま成人喘息に移行するということです。そうなれば、まずスポーツなんて出来ません。だから、最後サッカーしたいって思ったんです。無理してイナズマキャラバンに参加したのも、それが理由です」

衝撃告白も良いところだ。
こんなに辛い目をした子から、まだ何かを奪うのか。

「どうせ動けなくなるんだから、本物のサッカーやりたかったんです。壁とプレイするなんて、退屈ですから」

絢の美しい横顔が曇る。
「もっともっと」
そんな気持ちがくるくると周りながらも、絶望が勝ってしまっている。

「肺が弱いと、体に酸素が上手く回らない。酸素が回らないと体全体のパフォーマンスが下がるから、怪我の治りも遅ければ病気も倒せない」

少しずつ、絢の焦燥が浮き彫りになっていく。

「『死んでないだけ儲けもの』なんですよ」