ACT-6-

誰にでも秘密にしたい夜はある（高橋文哉） ページ17

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2月


恋空の撮影が終わった日、シンバもぽんずももなかも実家に連れて行ってたから誰もいない家に帰ってきたはずなのに、なぜか文哉がいた。


「なんか、会いたくなってさ〜結城さんに鍵借りちゃった！」って笑いながらご飯を作っててくれてた文哉を見て、理由はわからないけどほっとして。…ああ私気張ってたんだなあってなって。



いつも家に入り浸ってるから勝手を知ってる文哉はお風呂まで沸かしてくれてて至れり尽くせりだった。




スキンケアをしてリビングに戻ると「座ってて〜」ってキッチンから追い出される。




手持ち無沙汰になって部屋に行って次の仕事の台本を開いたけど内容が頭に入ってこなくて、ソファーに座ってテレビをつけてぼーっと画面を眺めてた。


「A、飯できたよ」

『ありがと〜』




「じゃんっ今日はAが好きなビーフシチューで〜す」

『美味しそう』

「頑張っちゃった〜いっぱい食べな？」

『うんっいただきまーす』

「召し上がれ〜」

『…美味し』

「よかった。…お疲れ様、A」

『ありがと。文哉がいると思ってなかったから嬉しい』

「んー、俺がAに会いたかっただけなんだけどね」

『うん、笑』




「ねえ今日さ泊まっていい？」

『ん？うん、いいよ』

「よっしゃ観たい映画あったんだよね」

『家で観ればいいじゃん』

「Aの家で観たいの〜」

『ふーん』

「なに」

『んーん』





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『ねえ文哉』

「んー？…っと」

『ちょっとだけ…こうしてていい？』

「…いいよ」


皿洗いをしてると後ろに体温を感じた。

Aがこんなことするのは珍しいというか2回目。

今回の撮影がAにとって大切だったってことは分かってたから、今日こうやって家に来たわけだけど、ぶっちゃけ元彼と一緒に撮影してた事実に対して余裕はなくて。


付き合ってるわけじゃないし、俺の片想いだろうけど
それでも嫌なものは嫌だし一緒にいることを許されるのならAの傍にいたい。


「A」

『…』

「背中じゃなくてさ、普通にぎゅって…する？」

『…する』

「よしっ、おいで」

『…あたま、撫でないで、泣いちゃうから、』

「もう泣いてんじゃん笑」

『うるさい』

「大丈夫、Aには俺らがいるじゃん」

『うん、』

「も〜、泣かないの」

『うん、』

「泣き止まないとちゅーするよ？」

『…ぃ…』

「ん？」

『…いいよ』









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