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明久が居なくなり静かになった医務室で、Aは体を起こし携帯を開く。
電話帳から悟の名前を探し発信ボタンを押すと1コールで繋がった。
《(ッ…もしもし)》
聞こえた声はまさに悟のものだったが、緊張で震えた声と改まった言葉に疑問を浮かべる。
そしてAの携帯で明久が電話を掛けた話を思い出して、急いで出たは良いものの電話の主が不明で、良い知らせなのか悪い知らせなのかもわからなくて戸惑っているんだと納得した。
『あー…俺』
《A!?》
『…はい』
名乗るよりも先に気付いてくれたのが嬉しくもあり、しかしそれだけ心配させたのかと申し訳なくもあり、思わず敬語になる。
《良、かっ…》
『…あの、ごめん。心配掛けた』
《本当に!!…Aまで…失うのかと…》
『…うん。悪かった』
自分"まで"という言葉が気になったが今は置いておく事にした。
明久の言う通り悟の声は濡れており、声や息が何度も激しく吸い上げられているのが聞こえたからだ。
《お願いA…いなくならないで…会えないのも辛いのに、すぐに駆け付けられないのに、声まで届かなくなるなんて…嫌だよ…ッ…俺おかしくなっちゃう…》
『…不安にさせて本当にごめん。ごめんなさい、悟』
《、…ふぅ……ぁ…ッ…》
言葉を紡ごうとして、しかし嗚咽に妨げられ、涙も溢れるばかりで止まらない様子が電話越しでも十分に伝わった。
悟が落ち着くまで暫く謝り続け、自分がどれ程愛されているのかを痛感しながら慰めるAだった。
漸く喋れるようになった悟はゆっくり自分の心の内を吐き出した。
Aが任務に明け暮れていた頃、自分は星漿体の任務に当たっていた事。
しかし護衛対象であった少女を守る事が出来ず人の醜悪な部分をモロに受け、命の尊さやこれまで抱いていた価値観が揺れ不安定になっていた事。
久々にAの声を聞きたくなったのも本心だがそれと共に相談に乗って欲しかったらしく、電話をし矢先にこんな状況に遭遇してしまった事を。
『それは…本当に悪い事をした。最悪のタイミングだったな』
《Aは悪くないよ》
その話を聞いて、そりゃあ命に敏感になってしまっているのも仕方がないと思った。
とは言え自分の為にこんなに取り乱してくれる様子を知れて、不謹慎だが少し嬉しかったのは悟には内緒だ。
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晩鶴紫呉(プロフ) - いえいえ!むしろ私が忘れてました (2021年4月1日 17時) (レス) id: 9a7d0082b8 (このIDを非表示/違反報告)
あくと(プロフ) - らっこさん» 現在は0巻のストーリーをコツコツ書き進めております!0巻が終わったら原作編に行きますので、もう暫しお待ちください!……なるべく早く再開したいです!リアルが忙しくて時間が取れず恨めしい(苦笑) (2021年3月17日 20時) (レス) id: 9b51245cfc (このIDを非表示/違反報告)
あくと(プロフ) - らっこさん» わぁ!!お返事が遅くなってしまい申し訳ありません!!そして当小説をとても好いてくださる気持ちがたっぷり伝わる温かいコメントをありがとうございます!!(嬉泣)自分は男主は攻めが好物なので逆に攻めの夢主しか書けないんですw喜んで頂けて嬉しいです!! (2021年3月17日 20時) (レス) id: 9b51245cfc (このIDを非表示/違反報告)
らっこ(プロフ) - あ、でも本当に無理しないでくださいね。神作者様...というか推作者様を無理させてしまうのは望んでいないので!あくと様のお好きなように書いていただければ自分は満足です...! (2021年3月11日 22時) (レス) id: b2f3d77b53 (このIDを非表示/違反報告)
らっこ(プロフ) - 最強さん攻めが多いのでうれしいです!いろんな感情たかぶらせながら何回も読んでます笑続き楽しみです。無理しない程度でいいので更新頑張ってください!呪の器さんが登場する原作偏も読みたいです。楽しみカ楽しみがありすぎて逆に辛いっ...笑 (2021年3月11日 22時) (レス) id: b2f3d77b53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あくと | 作成日時:2021年1月28日 20時