契約 ページ8
「……へ?」
時が止まったのかと勘違いするほど、俺が変な声でやっと返事をするまでの間が長く感じた。
そんな俺の気持ちなんかお構いなしに彼は続ける
『俺さ、料理はもちろん、洗濯も掃除も苦手で。生活用品とか食材を買うなんてほとんどやったことないからさ、北斗がいたら助かるなぁ〜って今気づいちゃったの!』
「待って、いきなりすぎて頭が追いつかないんだけど、俺が大我の家に居候させてもらう代わりに家事をやればいいってこと?」
『まぁそういうことになるね!どう?悪い話じゃないと思うんだけど?』
彼からの提案はやはりとんでもないものだった。軽く話を持ちかけてきたが、男2人が同じ屋根の下に暮らすなんて世の中的に考えても"良くある話"ではないだろう。
しかも俺と大我は昨日、実質今日出会ったばかり。
『もちろん北斗には家事をやってもらう対価として家賃無しで住まわせるし、食費や生活費も俺持ち。一部屋ゲストルームがあるから、今は荷物置いてあるけどそこを北斗の部屋にしていいよ。』
「なんで、何で出会ったばっかりの俺にそんな優しくしてくれるの?俺は何もできてないのに…」
単純に疑問だった。どうしてそこまでして俺を住まわせたいのか。どうして見ず知らずの転んだ酔っ払いを家に連れて帰ってくれたのだろうか。
『俺がただ家事ができないポンコツ野郎だってことも理由なんだけど、一番は目かな。一目見た時から優しい目をしてるなって思ったんだ。
で、料理食べて確信した。北斗は優しさで詰まったような人なんだなって。
だからだよ。北斗だったからそういう提案をしたんだよ。俺は誰彼構わず声かけるような人ではないからね。』
真剣な顔をしてそう言い切ってくれる君を俺はなんだか信じたいって思ってしまった。
もっと君を知りたいと、もっと君の近くにいたいと、そう欲が出始めてしまっていた。
でも天邪鬼な俺は、そんな胸のうちを全て明かすことなんて出来ず、
「大我がそう言うなら、そうさせてもらおうかな、バイトばっかりで就活がままならなくなったらどうしようって思ってたから」
そうやって違う言の葉を被せて本心を隠した。
『よし!契約成立だね!これからよろしく、北斗。』
「こちらこそよろしく、大我。」
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更新遅くなりすみません!
これからも更新頻度は高くないと思いますが、読み続けてくださると嬉しいです。
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しば(プロフ) - ぽんさん» 報告ありがとうございます!以後気をつけます!また何かありましたらコメントお願いします^ ^ (2020年9月22日 0時) (レス) id: 4f2125b82d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しば | 作成日時:2020年9月21日 23時