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「あれ…誰もいない…?」

「おう、そうだけどどした?約束?」

「いや、傘が…」

「傘?」

「店の前に白い傘があったから。誰かいるのかと」

「おー!忘れ物かな」

「ああ…」

なんだか拍子抜けしてしまったおれにやや不思議そうに「何飲む?」と聞いてきた圭介さんに、ハイボールを頼んで荷物を下ろす。

すぐに出て来たハイボールをグッと飲んだ。
落ち着け。

客がいなくて暇なのか、圭介さんは「傘、ありがとなー。ちょっと持ち主に連絡してみるわ」と誰かに電話をかけながら傘を店の中に入れる。
傘の持ち主が誰なのか気になって、圭介さんを穴が開くほど見てしまった。

「…あ、今どこにいる?白い傘!さっき置いてったろ?うん、店に置いておくから。うん?あーわかった。はい〜」

「…誰?傘の持ち主」

圭介さんが電話を切るや否や思わず聞いてしまった。

「誰って。お客さん」

「わかってる、お客さんはわかってる…!あの傘、前言ってた探してる女性、あの女性が持ってた白い傘にものすごく似てて」

「おお、この傘の持ち主、女の子だよ」

また心臓の奥がヒュッとなる。

「え…どんな…」

「どんなって…常連さんで、歳は…いやいやお客さんの個人情報にかかわる話流石にできないでしょ」

「いや…もう本当マジで圭介さん。圭介さん!おれこの2ヶ月ずっと三茶に通い詰めて、彼女に会いたくて


「圭介さんごめんー!」

突然店のドアが開くと同時に大きな声がした。


振り返ると入り口に立っていたのは、
紛れもなく俺がずっと会いたかった彼女だった。

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作者名:あこ | 作成日時:2021年12月14日 15時

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