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そのまま3人で近くの店に入った。

ビアバーのような場所で、彼女は目をキラキラさせてビールを選んでいた。

「本当にビールすきだよね」

「え?わたしがビール好きなこと言ったっけ?」

「ビール以外飲んでるの見たことない」

恥ずかしかったのか、そっかー、と苦笑いしてギネスを頼んでいた。

今日は予定があったわけじゃなく、あの男と飲みたくなかっただけなのか。
そう考えていたら和輝が口を開いた。

「Aさん、理と仲良いんですね」

「仲…仲いいのかな?」

おれを見る。

「井口さんと話す時間は、好きです。癒し」

そう笑ってギネスに口をつける彼女にまた心臓をつかまれる。

おれを横目で見て目が合った和輝は、ニヤニヤした顔をしていた。

「もーなによ」

肘で小突くとAさんもん?と笑う。

いつもと同じ、他愛もない話をした。仕事のこと、最近あった面白い話、和輝の恋人の話。そこまで話したところで、彼女はトイレで席を外した。

「…不思議と話してしまうね、Aさんには」
ぼーっとした顔をする和輝に

「だろ?なぜか色々話しちゃうし、話が尽きない。和輝も親しくない人に彼女の話するなんて珍しいよね」

「マジで…。あ、噂をすれば」

和輝がかかってきた電話をその場でとる。どうやら彼女らしい。

Aさんが戻ってくると同時に、俺帰るわ、彼女のとこ。と言い立ち上がった。
おれをチラッと見てニヤっと一瞬笑ったのが目に入る。今日何度目。

「じゃあ、Aさんまた」

「新井さんまた」

気を利かせてくれたのか本当に彼女に呼ばれたのかはわからない和輝を見送った。

久しぶりに2人で、しかも初めて夜にAzじゃない店でAさんと居ることに舞い上がっていたところ、

「井口さん明日もお仕事って言ってたよね。…わたしたちも帰りますか?」

Aさんの言葉にがっかりした気持ちをどうにかしたくて、

「どこに帰るの?」

なんてちょっと意地悪な言い方をしてみた。

「わたしは、わたしの家。井口くんは井口くんの…」

「おれも、Aさんの家」

彼女の言葉を遮ると、少し驚いた様子で、でもすぐにいつもの表情に戻ってわかった、と頷いた。

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作者名:あこ | 作成日時:2021年12月14日 15時

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