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「今日はお仕事でしたか？」
「うん、ちょっとだけ」
「お疲れ様です」
よっお待たせ理！と圭介さんからタイミングよく目の前に出されたハイボールを手に取り、彼女と乾杯した。
「昨日ぶりですね、よく来るんですか？…Aさんは」
「Aさん(笑)下の名前で良いですよ。歳も変わらないですから。変わらない…ことないか？」
「あ、おれは27です。」
「わたし29です。好きに呼んでください。」
お店にはよく来ます、と今日もビールを美味しそうに飲んでいた。ビールが好きなんだな。
「じゃあ、…Aさん」
「ふふ、さん(笑)はい。」
「最近おれよく来てたんですけど、たしか昨日が初めてだったから。お忙しかったんですか？」
「そうね…忙しかったかも」
納期が重なっててなかなか来れなくて、と答えるAさんを横目で見る。
ブレスレットと指輪が照明で光っていて、なんだかその光をぼーっと眺めてしまっていた。
「これ？…アクセサリー好きなんですか？」
「あ、いや…まあ好きです」
「ピアスかっこいいですもんね」
顔を覗き込まれてドキッとした。
考えてみると、ちゃんと顔を見たのは初めてかもしれない。サービスエリアは夜だったし、昨日はテンパって顔を見る余裕はなかった。
長いまつ毛にアーモンド型の目、派手でなく綺麗さも可愛さもある顔だな、と引き込まれるように見つめてしまった。
「ふふ、そんなに見ないで」
照れて顔を逸らした彼女のその言葉で、突然すべてあふれた。
おれはいつからこの人にやられちゃったんだろう。まだ今日で3回目。ちゃんと話すのは今日が初めてだというのに。
熱くなった顔を冷ますようにハイボールを流し込んだ。
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作者名：あこ | 作成日時：2021年12月14日 15時
