33:Accident ページ33
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【なるほど、凄いじゃないですかA。
プロに才能が認められたんですよ?
……あまり嬉しそうな声でない訳を、
僕にもわかるように教えてください。】
その日の夜。困り果てた私は
最年長であるアレックスに電話をしていた。
【うん、なんていうかね?
嬉しいよ、嬉しいんだけど。
その…私曲を作る時さ、色々考えるんだよね。】
【色々?】
電話口から耳に染み込むように
アレックスの優しい低音が響く。
【うん。例えば、
このギターの音サラ好みだろうなぁ、とか
今回の作詞はアレックスかなぁ、とか。
他にも色々。
ここにドラムソロ入れたらソジュン喜ぶかな、
ジョルジュ姐さんのかっこよさって
どうやったら伝わるかな、とか。
ほんと無意識だけど、気がつけば皆のことを
浮かべながら私は曲を作ってるんだよね。
練習の時の会話とかも考えたりして。】
くすくす、と笑い声が耳を擽る。
【分かります、僕もですよ。
特に僕はクラシカルな曲が多いので、
どうしてもしんみりした曲とか
失恋系多いじゃないですか。
歌詞書きながら、
あぁ、またこれはサラが恥ずかしいって
しばらく歌うの渋るだろうなぁ、とか。
敢えてフランス語とか挟んでみて、
ジョルジュの含んだ視線を楽しみにしたり。
…あぁ、分かりましたよ。
あなたは、彼と共同で歌を作れば
それを歌う人のことを考えられないと、
そう懸念しているんですね?】
そうだ、そうなんだ。それを言いたかったんだ。
アレから彼の今までの共同制作曲を
ネットで調べたが、そのどれもが
女性シンガーソングライターの歌を
彼自身が手掛ける、というものだった。
つまり必然的に考えるルートは
【やだよ私、自分のこと考えながら
曲なんか作れない。
それにね、私はJFECKの曲だから
こんな楽しく作れると思うんだ。
だから……その、私素人だし。】
【最高級の褒め言葉ですね、それ。】
とても嬉しいです、と続けられる。
あの時語学学校で知り合ってよかった、と。
【でも、相手はプロじゃないですか。
そういった懸念も
ハッキリぶつけてみたらどうでしょう?
案外、どうにかなるかもしれませんよ。
聞いたところ、
作ること自体が嫌ではないんですよね?】
そりゃあ、得るものも多いだろうし。
壁のボードに貼った
先程頂いたばかりの名刺に目をやる。
【うん…そうだね。
参考にしてみるよ、ありがとう。
おやすみなさい。】
【今度、ずっと言ってたので
そろそろ僕もそちらに伺いますね。
それでは、おやすみなさい。】
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朔夜(プロフ) - とこに。さん» とこに。さんはじめまして、暖かいお言葉本当にありがとうございます、、!!今回は努めてぐだらないようにしたので褒めていただけてとても嬉しいです!更新も、暇なうちに頑張りますので今後ともご愛読よろしくお願いします! (2019年3月9日 10時) (レス) id: f00e7030ca (このIDを非表示/違反報告)
とこに。(プロフ) - 話の全体的な疾走感が大好きです!作成されて直ぐに見つけられた自分の幸運を拝みました!無理せず更新頑張ってください! (2019年3月9日 0時) (レス) id: 0db8f5d879 (このIDを非表示/違反報告)
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