23:Accident ページ23
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カチ、カチとエフェクターを踏む。
私がよほど恨めしい目をしていたのか、
店長から
『すみません、こっちも仕事なので』と謝られ。
お詫びに時間内無料で貸します、と
エフェクターボードを貸してもらった。
ジャッ、ジャーンと音を試しながら、
ギターの重めの音に合うものを探す。
アンプのフットスイッチを踏んで、
ゲインのツマミを上げて、
また違うエフェクターを踏み。
全弦解放でジャラーン、と鳴らす。
「うーん、違うなぁ……」
カチッ、カチャ。
ジャラーン。
あ、この音の雰囲気なんか。
『……I'm fine.』
割り込んで来る低い声。
その主なんて1人しかいない。
なんとなく気まずくて─まぁそれは私が財布を
盗んだ挙句大スターに対して
『最低』だの『ギタリスト失格』だの
失言を連発したからであって─背中を
向けていたオフの天才ミンユンギさんの方に
目だけを向ける。
『お前もそう思った。
だから今一瞬音が止まった、だろ?
違うか?』
図星だ。
『…あなた、今オフなのでは?
仕事のことばかり考えるのよくないですよ。』
『お前何年生まれ?』
会話をする気があるのかないのか。
『93年生まれです。』
『タメじゃん。で、なんだっけ?
オフに決まってんだろ。
お前も分かってるから俺をシュガじゃなくて
財布呼ばわりしたんじゃねぇの?
てかオフなんだしタメなら敬語使うなよ。
ファンじゃないにしろ、
流石に事務所以外で曲は作らない。』
それも図星。うぐぐ。
日本語分からないと言ったのはどこの誰よ…
『…残念ですが、私は半分オフじゃないので。』
嘘は言ってない。
いくらアマチュアバンドとはいえ
ライブの時に僅かでも利益を得ている以上、
これは仕事と同義だ。
『それは作曲が?ギターが?
だいぶ熱心に音探ししてるけど。』
何もかもバレていることに腹が立つ。
しかしまぁ天才っていうのは、
やっぱこういうのを言うんだなぁ。
『オフのミンユンギさんには
関係ないのでは。』
『ふぅん?
じゃあ俺がミンユンギではなくシュガとして、
曲を作ろう、って言えばいい訳?』
はぁ、もう。
『何が言いたいんですか。』
『お前の曲に興味がある。
これは単にプロでなく1人の人間として。
財布盗んだ奴が同業者とか最高に面白いし。
更になお最低だ失格だ色々宣ってくれたし。』
多分本心は最後の方だろうな。
『怒ってらっしゃるので?』
『いや?面白がってる。』
こいつ、悪魔だ。
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朔夜(プロフ) - とこに。さん» とこに。さんはじめまして、暖かいお言葉本当にありがとうございます、、!!今回は努めてぐだらないようにしたので褒めていただけてとても嬉しいです!更新も、暇なうちに頑張りますので今後ともご愛読よろしくお願いします! (2019年3月9日 10時) (レス) id: f00e7030ca (このIDを非表示/違反報告)
とこに。(プロフ) - 話の全体的な疾走感が大好きです!作成されて直ぐに見つけられた自分の幸運を拝みました!無理せず更新頑張ってください! (2019年3月9日 0時) (レス) id: 0db8f5d879 (このIDを非表示/違反報告)
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