Little Sugar ． (ページ10)

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「………え、」

　顔を上げて、つい固まる。

　「大丈夫、大丈夫」

　小さい子をあやす様に、佐藤くんの手のひらは私の頭を優しく撫でていた。

　「後で基くん叱っとくし、おれ隣にいるから」

　あとちょっとだけ頑張れる？って言葉がエコーみたいに反射して、ぐるぐるの耳の奥に響く。

　佐藤くんってこんな、落ち着く声をしてたっけ。こんな距離近かった？

　いつもの事で慣れてるはずなのに、唐突にそれが胸を揺らした気がして顔が赤くなる。

　違う、これは恋じゃない。推しだから。推しが近いから。

　たまに投入される甘ったるい佐藤くんの優しさや距離の近さに顔を覆う。

　「えっ、待って泣かないで、もう基くん許さない」
　「な、泣いてない、から…」

　……ほんと？大丈夫？

　心配気な佐藤くんに頷いて立ち上がる。

　心臓に悪いよ、佐藤くん。

　そんな私の心の葛藤に気付いていないのか、佐藤くんが安心した様に微笑んだ。

　藍那の言う事、合ってるの、かな。

　ふと頭によぎったそれは。………人気者を好きになったかも知れないと言う事実は。

　不釣り合いかなとかライバルが多いとか、前途多難なものだった。